【SFC対策】日本の人口減少とSociety5.0~大阪教育大学教育大学2021年
今回の内容は以下の記事の続きになります。
(1)問題
これからの社会について資料Aのグラフから読み取れることをまとめたうえで,資料A,資料Bにもとづきながら,これからの社会を支えていくために行うべきことについて,あなたの考えを述べなさい(横書き)。
資料A
下図は国連事務局が2019年に公表した日本の年齢階層別人口の今後を推定したグラフで,グラフの横軸は西暦,縦軸は人口(万人,各棒グラフの下から0歳~14歳人口,15歳~64歳人口,65歳以上人口,そして上部は総人口を示している。
資料B
以下は,内閣府が発表した Society 5.0 について説明した内容の一部である。
・Society5.0とは
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する,人間中心の社会(Society)
狩猟社会(Socitety1.0),農耕社会(Society2.0),工業社会(Society3.0),情報社会(Society4.0)に続く,新たな社会を指すもので,第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。
・Society5.0で実現する社会
これまでの情報社会(Society4.0)では知識や情報が共有されず,分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため,あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり,年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また,少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して様々な制約があり,十分に対応することが困難でした。Society5.0で実現は,IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり,様々な知識や情報が共有され,今までにない新たな価値を生み出すことで,これらの課題や困難を克服します。また,人工知能(AI)により,必要な情報が必要な時に提供されるようになり,ロボットや自動走行車などの技術で,少子高齢化,地方の過疎化,貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて,これまでの閉塞感を打破し,希望の持てる社会,世代を超えて互いに尊重し合える社会,一人一人が快適で活躍できる社会となります。
・Society5.0のしくみ
Society5.0は,サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより実現します。これまでの情報社会(Society4.0)では,人がサイバー空間に存在するクラウドサービス(データベース)にインターネットを経由してアクセスして,情報やデータを入手し,分析を行ってきました。Socicty5.0では,フィジカル空間のセンサーからの膨大な情報がサイバー空間に集積されます。サイバー空間では,このビッグデータを人工知能(AI)が解析し,その解析結果がフィジカル空間の人間に様々な形でフィードバックされます。今までの情報社会では,人間が情報を解析することで価値が生まれてきました。Society5.0では,膨大なビッグデータを人間の能力を超えたAIが解析し,その結‐果がロボットなどを通して人間にフィードバックされることで,これまでには出来なかった新たな価値が産業や社会にもたらされることになります。
(内閣府「Society5.0」https://www8.cao.gojp/cstp/society5_0/一部改変)
(2) 資料Aの読み取り
資料Aでは、将来、日本ではさらなる少子高齢化が進行すると同時に、人口減少が加速する。2100年には総人口が2020年の総人口の約60%に減少すると予測される。
(3) 人口減少社会の問題点
①労働人口の減少による経済の衰退。
②特に地方で少子高齢化と人口減少が進み、地方消滅が懸念される。
③高齢化による医療・介護の費用の増大とスタッフの不足。
(4) 人口減少社会への対策
①IoTやAIなどのデジタルテクノロジーの活用。
②ロボティクスによる労働代替や補完的な労働による省力化とイノベーション。
③スマートシティによる都市や地域の最適化・活性化.
(5) IoTやAIなどのデジタルテクノロジーの活用
① IoTとは
・IoTとは Internet of Things の略称で、「モノのインターネット」のこと。
・あらゆるモノと人がインターネットを介してつながる。
・家電製品や自動車などの生活用品や、工場の機械などの設備、ダム・道路やトンネル・電柱などのインフラ(インフラストラクチャー)にセンサーやカメラがつく。
・情報(ビッグデータ)をリアルタイムに収集し、AIは解析して最適解を導き出す。
→IoTやAIを社会に実装する。
② IoTの実装例
【自動運転車】
車の周囲にカメラとセンサーを設置し、車の位置情報や周囲の状態(周囲の車との車間距離、前方の障害物や飛び出しの有無、交通信号や交通標識)などのビッグデータをリアルタイムに収取し、AIが瞬時に分析することによって、ハンドル操作やアクセル・ブレーキなどの運転を自動的に行う。多接続・低遅延の5Gの情報通信技術が進展することで車の自動運転接続能となった。
【工場の機械の配置をシミュレーション】
仮想空間(サイバー空間)に工場のデジタルツインをつくる。その仮想工場で、機械の配置をさまざまにレイアウトできる。そうすることで、労働者の動線を確保し、一番効率的な機械に配置(最適解)を見つけ出して、これを現実空間において実現できる。
【インフラの点検・整備】
高度経済成長期に建設した高速道路やトンネルやダム、電柱などの建築物や施設が築50年以上を経過し、老朽化している。実際にトンネルの崩落事故も起こり、死傷者が出ている。これらのインフラを点検するのに人手を使うと、膨大なコストと手間がかかる。そこで、あらかじめトンネルやダム、電柱などにセンサーを組み込み、リアルタイムで情報を収集してAIに監視させる。振動などのノイズといった異常を感知するとアラームを発して人間に知らせるシステムを構築することで、低廉なコストと労力でインフラの点検・整備が可能となる。
(6)ロボティクス化とイノベーション
ロボット工学のことをロボティクスといいます。
ロボットにAIを搭載することで、人間のさまざまな労働をロボットに代わりにやってもらったり(労働代替)、人間の仕事をロボットに助けてもらったり(補完的な労働)することが可能となります。
【医療】
医療現場ではすでにロボットアームを用いた遠隔手術が行われています。
【介護】
また、女性の介護士が多く、車椅子の車への積載といった力仕事が多い仕事柄、腰を痛める職員が多い職場でもあります。こうした現場にロボットスーツが導入されていて、重いものを持ち上げたり、運んだりするときに装着することで、業務の安全を確保し、労働力も節約できるなど、大活躍しています。
ロボットスーツは患者のリハビリの際にも歩行をアシストするなど、医療や福祉の分野で幅広い応用がされています。
(7)スマートシティによる地域の活性化
スマートシティについては、先に「SFC対策講座⑤【SDGs未来都市~テクノロジーを実装する】」を書きましたので、こちらの記事を参考にしてください。
(8)解答例
資料Aでは、将来、日本ではさらなる少子高齢化が進行すると同時に、人口減少が加速する。2100年には総人口が2020年の総人口の約60%に減少すると予測される。
人口減少社会をこれから本格的に迎えるにあたり、次のような課題が私たちに重くのしかかる。第一に、労働人口の減少による経済の衰退が考えられる。労働人口が減れば生産が停滞し消費も冷え込む。日本はこれまでのような経済成長を期待することは難しいだろう。第二に地方経済に与える深刻な問題である。特に地方で少子高齢化と人口減少が進み地方消滅が懸念される。第三に高齢化による医療・介護の費用の増大とスタッフの不足である。特に2 0 2 5年にはいわゆる団塊の世代が後期高齢者を迎えて医療や福祉の現場がひっ迫する2 0 2 5年問題が到来する。
以下では主に医療・介護分野での課題解決の手がかりとして「S o c i e t y 5.0」のもたらすインパクトについて考えてゆくことにする。人口減少と高齢化の進展による影響は医療と福祉に直撃する。深刻な人員不足は医療や介護の質の低下をもたらすばかりか、スタッフへの負担が増大して現場は疲弊し、多くの離職者を招き、さらなる人材不足は医療崩壊を引き起こす。このような人材不足を補い、より高度な医療と介護の質を担保するには、IoTやAIを医療や福祉の現場に実装するイノベーションは必須となる。
高画質で立体的な3Dハイビジョンシステムの手術画像のもと、術者である人間の手の動きをロボットアームが正確に再現する医療ロボットとしてダヴィンチが開発された。これによって離島や地方などの病院で精緻な技術を要する遠隔手術が可能となり、地域医療に大きく貢献している。またロボットスーツ「HAL」は体に装着することによって、身体機能を補助・増幅・拡張することができるサイボーグ型ロボットとして注目を集めている。福祉や医療でのリハビリにおける動作支援、介護施設や工場での重作業支援など幅広い分野での応用が期待されている。
新しい技術はロボットや機械などのハード面に注目が集まる。しかしこれを運用するのは人間である。医療機器や作業用ロボットの使用時に患者やユーザーに対して適切な使用法を説明して同意を得、安全・安心を確保することが何より優先される。このような高度なコミュニケーションスキルは学校教育や現場での研修・講習によって培われるものである。「S o c i e t y 5.0」の時代に生きる私たちは技術が独り歩きしないようにこれを厳しく監視し、ユーザーフレンドリーにかなうように、技術を正しく導くことが求められる。「S o c i e t y 5.0」には、人が中心となって人が人を支えることを基本とする「人にやさしい社会」を構築するという思想が根底にあることを忘れてはならない。このような理念の下で、私は将来大学でテクノロジーに対する最適なインターフェースに向けた学びを深めてゆきたい。(1200字)
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