【医歯薬看護必読】倫理観について
(1)はじめに
【医歯薬看護系学部】小論文では、生命倫理をテーマとする問題が出題されます。医歯薬看護の受験生は生命倫理を含め、生命倫理を含む医療倫理の問題について日頃から考えておく必要があります。
医歯薬看護系学部に限らず、環境倫理や企業倫理など文系・理系を問わず小論文で出題されますので、受験生は倫理について入試本番までに自分の考えをしっかりとまとめておく必要があります。
【獣医学部】小論文では、動物実験の問題、自然の権利や動物の権利との関係で生命倫理、環境倫理を考えておきましょう。
【参考】アマミノクロウサギ訴訟:1995年2月23日、奄美大島でのゴルフ場建設に反対する住民たちが、林地開発許可処分の取り消しなどを求めて、鹿児島地裁に提訴しました。この訴訟は、日本で初めて動物たち(アマミノクロウサギ・オオトラツグミ・アマミヤマシギ・ルリカケス)を原告にしたことで注目を集めました。
【経済・経営系の学部】受験生は、コンプライアンスや企業の社会的責任(CSR)との関係で企業倫理の問題が出題される可能性があります。慶應義塾大学の経済学部や総合政策学部、環境情報学部を受ける生徒さんは、特に今回の動画を参考にしてください。
(2)倫理とは何か
①道徳と倫理の違い
1) 道徳:
あらかじめ物事の善悪が社会的慣習、文化や宗教などを背景に決められているもの。
どのようにして道徳を守るのかという方向で議論されることが多い。
道徳の例)「あいさつ」「人に親切にする」(対人関係)、
「ゴミを捨てない」(公共心)
2) 倫理:
善悪の基準があらかじめ定められていない問題を考えること。
善悪の基準や根拠。
倫理の例)個人情報の扱い、環境保護と開発、
スポーツ倫理(ハラスメントなど)
生命倫理の問題)遺伝子治療、代理出産、臓器移植、ES細胞とiPS細胞
②倫理感と倫理観の違い
1) 倫理感:倫理についての感覚や感じ方。感=情念、エモーショナルな問題
2) 倫理観:倫理に対する価値観や捉え方。理=理性、哲学・倫理学を背景とする見方
倫理感 < 倫理観
☞ここがポイント
小論文や志望理由書では、「倫理観」を使うべし
(3)倫理をテーマとする問題が出題されたときの考え方
①ある問題について、最終的にはYes か No かで判断する。
②YesにせよNoにせよ理由や根拠が大切。Yes or No の結論で合否が決まることはない。
③特に Yes を選択したときは、「場合分け」を行い、「条件」をつける。
④個人の問題だけではなく社会的な視野(社会に与える影響)で考える。
【問題】尊厳死に対して賛成か反対か
【参考】尊厳死:延命治療を拒否して死ぬこと。
【考え方】
1)場合分け:どのような場合に尊厳死が認められるか
2)条件:尊厳死を認める場合、どのような条件をつけるか
⇒「小論文・究極の技法・プレミア」(有料記事)で詳しく解説をしています。
☞ここがポイント
小論文で重要なのは、結論よりも結論に至るプロセス。
生命倫理の問題では、「場合分け」や「条件付け」がプロセスにあたる。
(4)練習問題
あなたは臓器移植に対して賛成か反対か。
(ここでは、賛成の立場で臓器移植をする場合の場合分けや条件を考える)
●ヒント
ドナー(臓器提供者)とレシピエント(臓器移植を受ける患者)という言葉を使うこと。
図1.臓器移植
~信州大学医学部附属病院移植医療センターのホームページより)
●練習問題の考え方(思考のプロセス)
①「場合分け」
・治療目的であること
・医療水準に適合している
・あらゆる治療を施しても効果がなく、臓器移植しか患者さんを助ける
方法はない
②「条件」
・ドナー(臓器提供者)とレシピエント(臓器移植を受ける患者)の
同意があること
注意.
1)脳死者からの臓器提供については、生前の意思確認をリビングウィル
という。
2)臓器移植法の2009年改正では、本人の意思確認がなくても家族の同意
だけで脳死者をドナー(臓器提供者)とすることができると変更され
た。
・ドナーとレシピエントの個人情報を保護すること。
・ドナーとレシピエントとの金銭の授受を認めない。
・(年齢制限をつける )
⇒ 臓器移植法の2009年改正でドナーの年齢制限が撤廃された。
これにより、15歳未満の子どもの脳死者臓器からの提供も可能
となった。
練習問題の解答例はnoteブログの有料記事「【医歯薬看護】小論文プレミア/第1回「生命倫理」を考える/場合分けと条件」に掲載してあります。購読を検討くださるようお願いします。👇
●医歯薬看護系学部受験生へ
小論文や面接で医師や看護師の資質について聞かれます。そのときは「しっかりとした倫理観を持つ」という一文を必ず入れるようにしてください。
(5)応用問題
【問題】医師や看護師に必要な資質とは、どのようなものか。
【ヒント】必ず「倫理観」という言葉を用いること。さらに「倫理観」の内容を具体的に説明すること。
(6)応用問題解答例
医師や看護師の資質として考えられるのは、次の4点が挙げられる。第一に、しっかりとした倫理観の保持。第二に健康な身体と精神を持ち、その自己管理に努める能力。第三に豊富で専門分野の正確な知識や技術、観察力や注意力・分析力・判断力、持続力、行動力、忍耐力等の諸能力。そして、これらの技能を磨く向上心を持ち、努力できること。第四にコミュニケーション能力である。このうち、最後の2つは医師に限らず、ほかの職種にも同様の能力が要求され、いわば前提となる資質である。また、第二の健康維持と管理については、特に多数の患者を迎える病院内での勤務という職業上、常に正確な判断と行動が要求される医師であるからこそ、医師の健康上の問題はただちに医療ミスにつながり、場合によっては院内感染を引き起こし、患者の生命の危機につながる。したがって常に自身の健康状態をチェックし、生活の全般においてこれを管理する能力は必要不可欠である。
患者の心身に直接働きかけ、ときには注射や手術などの医療的侵襲を加える医師の医療倫理はとりわけ重要な資質であると考える。
以上、OK小論文塾長、朝田隆(りゅう)でした。
小論文入門 §1基礎編‐Pre③:「 【道徳と倫理の違い】倫理観について」序章終わり
小論文入門 §1基礎編‐小論文入門 §1基礎編①「小論文ではどこが評価されるのか」に続く