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【SFC対策講座/⑦SDGs未来都市~テクノロジーを実装する】


(1)SDGsと17の目標

・「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。
・2015年9月の国連サミットで採択された。
・国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標と169ターゲット。


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(2)問題

 国連はいま、地球が抱えている問題をわかりやすく17の目標と169ターゲットに整理してSDGsとしてまとめました。これは2016年から2030年の15年間で達成する目標です。
SDGsの達成に向けて内閣府は地方創生、優れたSDGsの取組を提案する地方自治体を「SDGs未来都市」として選定し、その中で特に優れた先導的な取組を「自治体SDGsモデル事業」として支援し、成功事例の普及を促進しています。
 みなさんは、ある架空の都市(仮にA市とします)の都市設計を任された責任者です。「SDGs未来都市」に選定されるための都市設計プランを策定してください。その際、初めにそのA市が抱える課題を1つ以上掲げてください(1つでもかまいません)。その課題は、SDGsの17の目標を参考にしてもいいですし、それとは別に新たな課題(たとえば新型コロナウイルスなどの新興感染症対策)でもかまいません。その課題解決にあたって、テクノロジーを都市に実装することを条件に解決策を考えてください。これによってSDGs未来都市に選定されやすいように、その都市のキャッチコピーを考えてください。キャッチコピーは【資料4】SDGs未来都市一覧の「提案全体のタイトル」を参考にして名付けてください。
使用するテクノロジーは【資料】に挙げたものでも、【資料】にないものでもかまいません。その際、単にAIを用いるという抽象的なアイディアでは得点を与えません。なるべく具体的にそのテクノロジーの使用法を説明すること。文章だけでなく、図や絵を用いてもかまいません。(指定字数なし)

【資料①】

IOTからIOEへ――場所の認識

① ここまで述べてきたように、IOTの基礎は状況の認識である。先にトレーサビリティ(注)の基礎としてモノの認識の例を挙げたが、トレーサビリティもモノを認識するだけでなく、そのモノが「いつ、どこで」という、時間と場所の認識とともに「どう処理されたか」といったことを、ビッグデータとして記録することが基本である。またインフラ管理では、さらに「どこで」が重要になる。
(注)トレーサビリティ‥‥野菜や肉の生産地や収穫日、農薬や飼料の種類のほか、加工、流通経路などのデータを記録・管理するシステム。

②「いつ」の方は――高度な保証を求めない限り――スマートフォン等の端末内蔵のシステムクロックで簡単にわかるが、「どこで」の方は簡単ではない。汎用的な位置測定技術としてGPSがあるが、北緯○度○分○秒、東経○度○分○秒というような絶対位置より、一般には場所の情報――つまり「このビルは何ビルか」「今3階の会議室にいる」というような、「意味を持った空間」としての「場所」の情報を知りたいことの方が多い。また技術的に考えて、GPSは衛星に対する天空の見通しが必要で、必ずしもどこでも使えるものではない。

③ ここで重要なのは「特定し識別する」こと――ならば「場所」にucode(注)を付ければいい。先に述べたように、ucodeを付けてモノを認識する情報基盤の確立を我々のYRPユビキタス・ネツトワーキング研究所で行っているが、それと同じ基盤を利用して場所にucodeを付けて情報をくくり付ける。この手法をオープン化すれば、誰でもそのインフラを使い、場所や位置の情報の発信ができるような場所情報基盤となる。
(注)ucode(ユビキタスコード)‥‥あらゆる「モノ」や「場所」に世界で一意の番号を付与するための識別子のこと。

④ モノにIDを付けてネットからモノを認識できるようにすることで「ネットに繋ぐ」のが、IOTの「モノのインターネット」の最初の意味だったが、ここでは場所にIDを付けてネットから場所を認識できるようにすることで「ネットに繋ぐ」のだ。

⑤このように「ネットに繋ぐ」モノが単なる「物品――thing」でなく、例えば場所というようなケースも包合することを明示するために、IOE――internet of Everythingという言い方も、最近言われるようになってきた。

⑥ このようなIOEの応用としてまず挙げられるのが、「マンナビ」(カーナビが車を誘導するのに対して人、Man〈マン)を誘導する)である。

⑦ ucodeを場所に付けることによって、空間を場所として構造化し情報を与えれば、それを利用して多くの人が自律的に(ひとりで)移動することを支援できる。

⑧ヒューマンスケールのナビゲーションでは、2つ並んだドアの先は違う部屋なのでドア位置は細かく見分ける必要があるが、部屋に入ってしまえばその中での位置はそれほど細かく必要ないというように、場合によって求められる空間認識の精度が異なる。

⑧また先に述べたように、ビル内では絶対位置座標はあまり意味がない。ビル内や建物内の案内図が屋外の地図と大きく異なるように、位置座標的な正確性より、この廊下はどこに繋がっているという場所同士の関係性の認識の方が重要なのである。

⑨ヒューマンスケールのナビゲーションでは、絶対位置座標ベースの「カーナビ」でなく、場所の意味に基づく「マンナビ」が求められる。マンナビでその場所の意味情報がわかれば、知らない場所に行っても、不安なく歩くことができる。

⑩視覚などの障碍者がひとりで移動する場合にも、マンナビは非常に役に立つ。また、必要なだけの解像度と意味で場所を指定できるので、例えば「総務部のコピー機の隣の棚」といったものにucodeを付ければ、それを送付先として指定することで、補充品をロボットで自動的に補充するような、マイクロ物流も将来は可能になるだろう。

目指すべき「IOE国土」日本

⑪「場所に情報をくくり付ける」というコンセプトは、ちょっと考えれば、宣伝的な応用から、物流、観光ガイド、さらには緊急通報まで、さまざまな応用が考えられるのだ。食品や薬品のトレーサビリティについても、商品の流通のすべてのステップにおいて「いつどこで誰が何をした」という詳細な記録をとるのがその基本であり、「どこで」の部分を自動認識できる汎用的機構は大きな助けになる。

⑫輸送の省エネの切り札として言われている「マルデモード輸送」などでも、コンピューターが自動認識できる標準的な場所識別子という概念が、そのオペレーションの自動化には必ず出てくる。そもそもセンサーネットワークでも、データをクラウド利用するならば、そのセンサー情報が「どこ」のものかが、ネットの中で一意に特定できなければ意味がない。

⑬情報内容の保証の問題などさまざまな問題は抱えているものの、インターネットのオープン性は従来できなかったレベルで利用者自身が発信者となることを可能にした。利用者は決して受信のみのただの受益者ではない。助けられるだけでなく時には助ける存在でもあり、そのことがコンテンツの急速な充実を可能にした。

⑭そして、ボランティアだけでなく、多くの実ビジネスを可能にする汎用的でオープンな基盤だったからこそ、資金が投入されインフラが整備され、要素部品が進歩することでコストが安くなり、ユーザが増えそれがまた環境全体の魅力を増すという良循環に入ったのである。

⑮それと同様にオープンなIOTの基盤として、場所のオープンな識別インフラができれば、多くの可能性が出てくるだろう。国がすべてをやるのでなく、国はインフラの確立を行い、情報の書き込みを許し、あとは多くの人々の参加を期待する。国が発信すべき情報とボランティアやビジネスなどやりたい人たちが発信する情報の両方が、この基盤を共通に使うわけだ。

⑯ガードレール、街頭など少なくとも国土交通省や地方自治体が管理しているすべてのモノの中に、場所ucodeのタグ――RFIDや赤外線または無線を使ったマーカーを入れたい。住居表示の中にも入れ、三角点と言われる地表に埋めた基準点にも入れることが進んでいる(図2・9)。

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⑰すでに、国土を3メートル角のメッシュで区切りucodeを振ることを国土地理院では行っており、位置座標や住所などのさまざまな場所記述方式をucodeをキーとして相互変換できるようなシステムを確立しようとしている。

⑱工事で使われるコーンにも最近はLEDが入って光るものがあるが、それを少し進化させて情報を発信させれば、まるで電子の「結界」を張るような感じで、危険なエリアに関する情報や工事期間、迂回路などの情報をクラウドに)「アツプ」し、各自のスマートフォンで簡単に確認することができるようになるだろう(図2・10)。

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⑲日本中を世界で最先端の「IOE国土」にして、それにより「ユニバーサル社会」を実現するという計画もある。東京・神戸・青森・名古屋・静岡・熊本などでも実証実験を行った。標準仕様を固め、それをオープンにして公共の道路、建物などから整備を行い、また民間での利用も振興し、「場所情報インフラ」を確立したい。そして今後10年ぐらいをかけて、日本全国を世界でも稀な「IOE国土」にできるよう努力し、世界に日本が確立させた新しい仕組みとしてみせたいと考えている。

⑳我々が日常目にする点字ブロックは、物理的突起という形で場所に情報を結びつけることを、目の不自由な人のために行った。これは、1965年に三宅精一氏という同山市の篤志家が発明し、それが今や欧米でも認められ Tactile Ground Surface Indicatorとして徐々に広がり、世界中の視覚障碍者の助けになっている。まさに日本発のコンセプトによる世界貢献。すべての人のために進んだIOTの技術を使い、場所に情報を結び付ける――場所情報基盤やucodeもその先人にぜひ続きたいと考えている。

「IOTとは何か」(坂村健、角川新書、2016年)P67-74

【資料②】

バルセロナのスマートシティ

① スペインのバルセロナ市(人口約160万人)は、カタルーニャの州都で、ガウディの建築やピカソやミロといった芸術家が活躍した都市としても有名である。1992年のオリンピック以降の都市成長には目を見張るものがあるが、欧州におけるスマートシティのモデル都市にもなっている。バルセロナでは、センサーで都市内の様々な状況をモニターし、そのデータをアプリを通じて市民やユーザーに提供するサービスや、交通制御やごみ収集などの公共サービスと連動させる施策を導入している(図)。例えば、バルセロナは、自動車の排気ガスによる大気汚染や騒音などの環境が悪化していた都市でもあったが、交差点部に複数の人気汚染濃度や騒音を計測する環境センサーを取り付け、それをオープンデータとして公開し、計測値が高くなる(環境が悪化する)と、交差点の自動車の青信号の間隔を調整して自動車を停車させずに流して、対象となる交差点部の排気ガスを低減させるといった施策を導入しているまた、欧州の多くの都市では、日本のように車庫証明がなくとも自家用車が購入でき、街なかでは十分な駐車場が整備されていないために、道路の路肩に駐車する路上駐車が多く、路肩の駐車スペースに駐車しようとして、空きスペースを探して走り回ることも少なくない。そのため、バルセロナでは一部の地区で、路肩の個々の駐車スポットの路盤面に駐車の有無を感知するセンサーを埋め込み、ドライバーがアプリを通じてスマートフォンでどこの駐車スポットに空きがあるかを認識できる「スマートパーキング」を導入している。

センシングシティのイメージ

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②道路に埋め込まれたセンサーにはバッテリーと発信機能が付き、駐車車両の有無を示す信号が発信され、そのデータがアプリを通じてスマートフ地図上に表示される空き駐車スポットの位置をリアルタイムで見ることができる。

③ 他にも、人感センサーが付いた街灯である「スマートライティング」や、道路脇などに設置された街なかのごみ収集容器(コンテナ)内部にゴミが満杯になったかどうかを発信するセンサーが付いた「スマートごみ収集」や、「スマートサイクル」などを導入している。街なかのセンサーのデータは“ Sentilo ”というデータプラットフォームで統合管理され、オープンデータ化されるシステムを導入している。“ Sentilo ”は、世界各地の都市でも共有して利用できるデータプラットフォームとして注目されており、バルセロナをフィールドにして開発されたシステムが世界各地で応用されることも期待されている。

④ 面白いのは、「ウォールスポット」というグラフィティー(落書き)フリーな屋外の壁をインターネット上で検索し、確認できるアプリと仕組みである。バルセロナでは、壁面などへの許可のない落書きが問題にもなっている。中には芸術的な落書きもあるが、落書きができる壁面をアプリで公開し、誰かが落書きを描くと一週間は保たれ、その後消されて再びフリーウォールになる。公園内に落書き用のフリーウォールを新設し、アプリで公開している。その結果、無許可の落書きが減った効果もあったとのことである。落書きイベントの企画も行ったり、バルセロナの人に興味深いものを紹介して、当事者と地域社会とのコミュニケーションを促す落書きのサイトでもある。

⑤ バルセロナでは、交通に関しても先進的な取り組みが進む。これまで都心部のバス路線が複雑で来街者にわかりにくかったのを再編し、縦横に走る路線に系統を整理して観光客にもわかりやすい路線へと生まれ変わった。また、バス路線の番号ごとにバスの待ち時間が停留所に表示される機能も導入された。電気自動車や電動バイク用の電気ステーションも市内に500カ所以上設置されており、無料で使用できる。
(『Society 5.0』日立東大ラボ、2018年、日本経済新聞社、P105~108)

【資料③】

モビリティ革命「MaaS」とは何か

① MaaS(Mobility as a Service:モビリティ・アズ・ア・サービス)は、便利なアプリをつくるだけの概念ではなく、シェアリングサービスのことでもない。マイカーの保有を前提とした社会から多様なモビリティが共生する社会に、MaaSという仕組みを通してパラダイムシフトをしていこうという概念であり、新しい価値観をつくり、持続可能で安心安全な社会を目指していくためのものだ。

② つまり、クルマを保有することで移動の自由が得られてきた従来の交通社会に加えて、新たな選択肢を提供していく。ユーザーはMaaSを通して、マイカーという便利な移動手段に匹敵するような移動の自由が得られる。まるで自分のポケットにすべての交通があるかのような、そんな感覚。これこそがMaaSが実現する社会の第一ステップだ。

③ MaaSを契機に交通産業にイノベーションを起こし、デジタリゼーションを進めていくだけではなく、MaaSは交通産業に従事している人たちの意識や行動を変えていく。そして、交通産業だけにとどまらず、すべての産業にビジネスチャンスを創出し、まちづくりの在り方をも変えていく。MaaSの実現を通して、一般ユーザーは賢い移動の仕方を学び、よりスマートな生活スタイルを実現するようなるだろう。

④ 100年以上の歴史を誇る世界最大の交通事業者連合組織「UITP(Union
Internationale des Transport Publics)では、MaaSを次のように定義している。

MaaSとは、さまざまなモビリティサービス(公共交通機関、ライドシェアリング、カーシェアリング、自転車シェアリング、スクーターシェアリング、タクシー、レンタカー、ライドヘイリングなど)を統合し、これらにアクセスできるようにするものであり、その前提として、現在稼働中で利用可能な移動手段と効率的な公共交通システムがなければならない。このオーダーメイド・サービスは、利用者の移動ニーズに基づいて最適な解決策を提案する。MaaSはいつでも利用でき、計画、予約、決済、経路情報を統合した機能を提供し、自動車を保有していなくても容易に移動、生活できるようにする。

⑤ また、欧州のITS(高度道路交通システム)をけん引するERTICO(European Road Transport Telematics Implementation Coordination Organization)により設立されたMaaS ALLIANCE(MaaSアライアンス)では、次のように定義する。

MaaSとは、様々なモビリティサービスを1つのモビリティサービスに統合し、好きな時にアクセスを可能にするサービスである。利用者にとってのMaaSの価値は、複数のチケット発行や支払い操作を1つのチャネルのみで行い、移動を可能にするアプリケーションを提供することである。MaaSオペレーターは、利用者の要望に応じて、多様な移動手段を提案する公共交通機関車、カーシェア、タクシー、レンタカーやリースなど、手段を問わずそれぞれを組み合わせ、バラエティー豊かな移動手段を提案する。また、MaaSサービスが成功することで、新しいビジネスモデルが誕生し、今ある移動の選択肢が見直され、新しい運用方法の確立にもつながる。入ってくる情報が改善され、今まででは考えられなかったような利用者のニーズに応えることができるようになる。MaaSの目的は、単に個人が車で移動するよりも、より便利で持続的、またコストの低い代替手段を提供し、利用者一人ひとりに最高の価値を提供することにある。

⑥ いずれにおいても、交通の新しい選択肢を提供し、事業者とユーザーが双方向でつながり、サービスがオーダーメイドになり、マイカーよりも便利で持続的なサービスと価値を提供することと定義している点がポイントだ。

⑦ 世界的に地球温暖化への対応は待ったなしであり、世界では毎年130万を超える人々が自動車事故で亡くなっている。今後も増え続ける「買い物難民」への対応、縮小する交通産業の再生、マイカー保有と非保有者との移動格井といったソーシャルインクルージョン(社会的包摂)への対応など、新しいモビリティサービスを育成し、既存の交通手段との連携、再生を促進していくMaaSに対する期待は高い。国家を挙げて産官学が一丸となって取り組んでいく重要なテーマといえる。
(「Beyond MaaS」日高洋祐、牧村和彦、井上岳一、井上佳三、日経BP、2020年、P16~18)

【資料4】SDGs未来都市一覧


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