【SFC対策講座/用語⑤と過去問解答例】IoT(モノのインターネット)
(1)IoTとは何か
近年、IoT(モノのインターネットInternet of Things:IoT)の技術革新に注目が集まっています。
IoTとは、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続される技術です。
単に繋がるだけではなく、モノがインターネットのように繋がる、情報交換することにより相互に制御する仕組みのことになります。
この技術はこれからの社会や生活に大きなインパクトを与え、ドラスティックに世の中の仕組みを変えていく起爆剤となることでしょう。
この技術は、Uberの「ライドシェア」(利用者が相乗りができる)として既に運用が始まっていて、将来的には自動運転車にも発展してゆくものです。
家庭では、スマート家電やスマート・メーターなどのテクノロジーが出現し、IoTは、私たちの生活を飛躍的に変えつつあります。
ビックカメラのホームページより引用
https://www.biccamera.com/bc/c/topics/smart_kaden/index.jsp
(2)IoTの目指す5つの目的
IoTの技術は、単なる商品開発や新しいサービスを提供することだけでなく、都市設計にも大きな影響を及ぼしています。
物流やモビリティ、エネルギー、防災などの都市が抱える課題を網羅して総合的に考えることにより解決を図り、人間にとって住みやすい都市作りを目指すスマートシティ構想の根幹となる技術でもあります。
スマートシティについては、後日、このブログで解説する予定ですが、ざっくりとその目的を紹介すると、以下のようになります。
①快適で、②安全・安心が保障され、③地球環境や、④人権に配慮した、④強靭で(resilience)、⑤持続可能な(sustainable)都市設計。
これは、先日紹介したSDGs(持続可能な開発目標)にも重なる理念になります。
このスマートシティを支える根幹となるIoTについても、単なる便利な技術というだけに留まるものではなく、その本質的なコンセプトには、上記の5つの目的を併せ持つものになります。
(3)IoTの特徴
IoTは産業から都市設計を初めとする建築、医療・福祉など幅広い分野に応用領域が拡大していますが、この技術を特徴づけるものとしては、いろいろありますが、今回は以下の点を指摘しておきたいと思います。
可視化について、以下の概念図で説明したいと思います。
複雑な現実空間から、いくつかの情報(位置、温度、湿度、数量など)をセンシング(センサーと呼ばれる感知器などを使用して様々な情報を計測して数値化する)して分析します。
そのコピーをデジタル空間に保存して、常時モニタリング(観察、記録)することで、現実をリアルに補足・俯瞰することができるのです。
必要に応じて、その情報を取り出したり、加工したりして、現実空間の最適化を目指します。
このように、デジタル空間上に現実空間を再現することを「可視化」と言います。
(4)「可視化」の例
「可視化」の例をいくつかあげたいと思います。
トンネルや橋梁にセンサーを設置して、ヒビ割れなどの劣化を探知するという方法があります。
近年、トンネルの天井が崩落したり、橋が落下する事故が相次いでいます。
これは高度経済成長期に建設したインフラ(インフラストラクチャーのこと、社会的経済基盤と社会的生産基盤とを形成する社会資本の総称)が50年以上も経って劣化したことに起因します。
すでに首都高速道路などの補修工事が始まっていますが、人手と資金の問題により、当時造られたすべてのインフラを修理するには時間がかかります。
そこで、ヒビ割れなど問題が生じたところを部分的に修理することになるのですが、その点検作業をすべて人の手で行うには膨大なコストや手間がかかります。
これに対して、トンネルの天井や橋梁、電柱などにセンサーを設置して、振動などをモニタリングして異常が発生したときに自動的に検知して通報するシステムを構築しておけば、最小限の監視員の配置だけで済み、コストの大幅削減につながります。
このように、モノ(トンネルの天井や橋梁、電柱など)をインターネットにつないでおけば、監視員は事務所にいながらにして、ネット空間を通して全国のインフラ情報を「可視化」して把握・管理することができるという仕組みがIoTの最大の特徴になるかと思います。
(5)SFCの入試問題ではIoTを使って合格答案を書く
それでは、実際にSFCの過去問を解いてみます。
慶應義塾大学環境情報学部2018年の問題を取り上げます。
問題ではSFC構内の写真が添付されて、課題とその解決策を書くように指示されています。
その一部をここで紹介します。
問2 以下の資料に、SFCを見学に来たA君とB教授の会話と写真があります。これを読み、会話と写真から問題を三つ発見して解答欄2-1から2-3に記述してください。
・発見した問題は、関係する写真番号とともに文章で記述してください。ひとつの問題を説明するために複数の写真を指定してもかまいません。
・会話や写真に直接関係ある問題について書いてください。
・表層的な問題でなく、なるべく根本的な問題を発見してください。
・字数の制限はありません。
問3 問2で発見した問題のひとつを解決する方法を考えてください。誰にとっての問題がどのように解決されるかを、解答欄3に具体的に自由な形式で記述してください。
・解答はすべて文章で記述してもかまいませんし、絵と文章を組み合わせて記述してもかまいません。
・「AIで解決する」のような漠然としたものや抽象的なものではなく、実現可能性がある解決方法を示してください。
(写真8)
B教授:昔はここに水が流れてたんだけど、地震か水不足かで流さなくなってしまったようだね。
A君:え―、そうなんですか。水が流れてたらもっとカッコ良いのに
(写真9)
A君:階段がちょっとくたびれてるみたいですね。
B教授:まぁもう30年経ってるし、前の地震のときズレた気もするね。
(6)解答例
問2
地震が原因で水が流れなくなったということなら、この場所に水を供給しているパイプが地震で破損したことが原因と考えられる。地下に埋設されている水道やガスのパイプが老朽化し、また地震が原因となって亀裂が入るなど破損した場合、どこの箇所に問題が発生しているか、地上から突き止めることができない。結局、地下に埋設されている水道管が破損した場合、すべての地面を掘りおこし、すべてのパイプを新しいものに交換する手間とコストがかかる。
水道管の破損による単なる水漏れならば、これによって生じる被害は少ないが、階段の老朽化は、障がい者や子どもや高齢者などの社会的弱者が転んで怪我をする問題が起こる。水道管や階段だけでなく、ほかにも施設の老朽化はキャンパス各所で起こっている可能性があり、電柱や建築物の場合、これが倒れたら深刻な人的被害が発生する危険性がある。
問3
SFC施設の老朽化はキャンパスで学ぶ学生や教員のほか出入りする業者や訪問客のすべてに対するリスクとなる。そこで、この課題のソリューションとして、以下の方法を提案する。
水道管だけでなくキャンパス内の建物や電柱の表面にセンサーを設置する。これを施設管理者がモニタリングして、ひび割れなどの破損によって生じる振動や異常音を検知すると警報が出るシステムを構築する。これにより、いち早く施設の不備や故障を発見し、被害が出る前に修理することが可能となる。
こうしたIoTの技術を応用した設備の安全管理の取り組みによって、キャンパス内の人々の安全と安心を担保することができる。またこのような問題を教員や学生が共有し、システムの実装から運用までを授業の一環に組み込むことで、SFCで学ぶ学生のテクノロジーに対する理解を深め、環境デザインの本質を学ぶ良い機会を提供するという利点にもつながる。
👇オンライン個別授業(1回60分)【添削指導付き】