「地下階段」順天堂大学医学部2015年
(1)問題
「キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい」。
(2)考えかた
暗く、上方に延びる階段。
前方に微かに見える光(出口)。
赤い風船。
これらは何のメタファー(比喩)かを考える。
医療に重ねながら、比喩を事実に置き換えて、医療の意義や目的について丁寧に論じる。
第一段落は、絵の状況描写を記す。
最終段落でもう一度、第一段落で述べた事柄に言及して、オチをつけるとよい。
(3)解答例
男は暗い階段をひとりで登っている。行く手に微かに明かりが見えるが、道はまだ遠い。長い道のりを一歩ずつ足元を確かめながら、覚束ない足取りでゆっくりと登ってゆくが、ときにはよろめいて階段を踏み外しそうになる。男が足を踏み外して転びそうになった瞬間、そっと手を差し伸べる人がいる。
手術後の患者のリハビリは、このようなものではないか。怪我や病気を発症する前の日常生活に戻るため、患者は毎日リハビリテーションに励む。起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容などの日常生活動作(ADL)は健康であれば当たり前にこなせる動作で、私たちはふだんこれを強く意識されることはないが、怪我や病気、加齢に伴って、こうしたADLをこなすことが困難になる。私たちの生命や生活の尊厳はADLによって保障されているという事実は、医療従事者を志す私にとって、銘記しておかねばならない重要事項である。
医師の仕事は直接的には病気や怪我を治すことにある。しかし、手術が成功したからといって、これを医療のゴールとみなすことはできない。患者が退院するまでの期間、投薬や食事管理等のほかに、患者の体力を回復しADLの改善・回復を図るためにリハビリは必須となる。これにあたるのは理学療法士や作業療法士である。患者ひとりでは辛く困難な作業でも、専門官の立場から患者に手を貸し、時には慰め、時には叱咤激励をしながら患者に寄り添い、発症前の日常生活にできる限り近づけるというゴールを目指してケアをする。
医療は医師のキュアに加えてこのような看護やリハビリといったケアが伴うことで成り立つものである。私はチーム医療の重要性を認識しながら、患者のQOLの改善に向けて尽力する決意である。行く手に微かに兆(きざ)した明かりが明かりが患者にとって確かなものとなるように。(761字)
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