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【嫌韓・嫌中・嫌日/日中韓の意識調査】青山学院大学総合文化政策学部総合文化政策学科小論文2015年

(1)問題

 以下の図表は、アジア諸国の日本に対する友好度 (「親日度」)、および、 日本における韓国と中国に対する友好度 (「親近感」)についての調査から得られた結果をまとめたものである。 

 これらを参照して 、 (1)これらのデータからどういったことが読み取れるかを示し、 (2)その状況についての自分なりの見解(問題点、解決策等を含む)を、600字以上800字以内で論じなさい。

注意 1.本文は横書きとし、適切に段落分けをし、段落冒頭は1字下げること。カギ括弧や句読点などの記号の使い方は、原稿用紙における原則どおりに行うこと。 2.参照した図表については、記述内で図表番号を明記すること。

《調査1》 アウンコンサルティング (株)「アジア10カ国 の親日度調査」 ・ 調査期間:2012年 10月 26日~11月 2日、2014年 8月4日-14日・対象者条件:18歳以上の男女・対象国:アジア10カ 国 (韓国、中国、台湾、香港、タイ、マレーシア、 シンガポール、インドネシア、ベト ナム、フィリピン) ・標本数:各国100人 (ただし、2012年度のシンガポール については53人)
《調査2》内閣府「平成25年度外交に関する世論調査」・調査時期:2013年9月26日~10月6日・調査対象:全国20歳以上の日本国籍を有する者・標本数:3、000人のうち有効1回 収数1、848人 (61.6%)・調査方法:調査員による個別面接聴取法

青山学院大学小論文資料図1
青山学院大学小論文図2
青山学院大学小論文資料①
青山学位総合文化政策2014小論文図4
青山学位総合文化政策2014小論文図5
青山学院大学小論文資料②


(2)図表の読み取り/図1・図2アジア諸国の日本および日本人に対する好感度

【考え方】大きな傾向と変化を見る。

●図1 日本という国が好きですか? 

①大好き・好きの合計を比べる

②2012年と2014年とを比較して変化をみる。

③中国・韓国について他国と比較して特徴をつかむ

以下、図1をまとめ直したのが以下の表になる。

青山学院大学総合文化政策小論文2015図表分析 2012年_page-0001


青山学院大学総合文化政策小論文2015図表分析 2014年_page-0001

【図1からわかったこと】

①中国と韓国の人の日本に対する好感度は他のアジア諸国・地域に比べて低い

②韓国の人の日本に対する好感度は年度によって変化が見られる(2012年に比べて2014年は日本に対する好感度[大好き・好きの合計]は20人増加した)。

③中国の人の日本に対する好感度は2012年と2014年を比較してあまり変化が見られない(2014年は2人減少)。

●図2 日本人が好きですか

①大好き・好きの合計を比べる

②2012年と2014年とを比較して変化をみる。

③中国・韓国について他国と比較して特徴をつかむ

④図1の中国・韓国の結果と比較する

以下、図2をまとめ直したのが以下の表になる。

図2青山学院大学総合文化政策小論文2015図表分析2012年 _page-0001
図2青山学院大学総合文化政策小論文2015図表分析 2014年_page-0001

【図2からわかったこと】

①中国と韓国の人の日本人に対する好感度は他のアジア諸国・地域に比べて低い

②韓国の人の日本人に対する好感度は年度によって変化が見られる(2012年に比べて2014年は日本に対する好感度[大好き・好きの合計]は31人増加した)。中国の人の日本人に対する好感度は年度によって変化が見られる(2012年に比べて2014年は日本に対する好感度[大好き・好きの合計]は9人増加した)。

青山学院大学総合文化政策小論文2015【図1・図2のまとめ】_page-0001

③日本と日本人に対する好感度を分析すると、韓国は2012年・2014年ともに日本に対する好感度よりも日本人に対する好感度を感じる人のほうが多い。中国はこの関係が当てはまらない。

④日本と日本人に対する好感度を分析すると、韓国は2012年と2014年との間には正の相関関係が見られるが、中国では、この関係があてはまらない。

(3)図表の読み取り/図3韓国に対する親近感

【考え方】「親しみを感じる」と「どちらかというと親しみを感じる」の合計を計算して傾向をみる。

・総数:40.7%(男性:34.7%、女性:45.9%)

【図3からわかったこと】

①日本人は韓国に対しての好感度が50%を割り込んでいて、いわゆる嫌韓の感情を持つ人が多い。

②男性よりも女性のほうが韓国に対しての好感を持つ人の割合が高い。

・年齢

20~29歳:56.1%

30~39歳:44.2%

40~49歳:48.5%

50~59歳:41.5%

60~69歳:34.3%

70歳以上:31.9%

③年齢があがるにつれて、おおむね韓国に対する好感を持つ人の割合が下がる傾向にある。

④20~29歳の若い人で韓国に対する好感を持つ人は過半数いる。30歳以上は過半数を割り込んでいる。

(4)図4韓国に対する親近感の年度別推移

【図4の分析からわかったこと】

①韓国に対して「親しみを感じる」が「親しみを感じない」よりも上回っている年のほうが多くあり、近年は「親しみを感じない」が「親しみを感じる」を上回っている(いわゆる嫌韓の傾向が強い)。

②韓国に対する好悪の国民感情は一定のトレンド(流行)によって変化する。

(5)図5中国に対する親近感

【考え方】「親しみを感じる」と「どちらかというと親しみを感じる」の合計を計算して傾向をみる。

・総数:18.1%(男性:18.0%、女性:18.1%)

【図5からわかったこと】

①日本人は中国に対しての好感度が極端に低く、いわゆる嫌中の感情を持つ人がとても多い。

②男性と女性との間に差異は見られない。

・年齢

20~29歳:33.0%

30~39歳:18.9%

40~49歳:18.7%

50~59歳:19.6%

60~69歳:12.4%

70歳以上:16.0%

③20~29歳の世代は他の世代に比べて中国に対して好感を持つ人の割合が高いが、30歳以上の世代では、中国に対する好感度の変化はあまり見られない。

(6)図6中国に対する親近感の年度別推移

①平成6年以前は中国に対して「親しみを感じる」人の割合が「親しみを感じない」人の割合よりも高かったが、平成15年以降は「親しみを感じない」人の割合よりも一貫して高くなっている(いわゆる嫌中の傾向が顕著になってきた)。

(7)問題の考え方

日本は太平洋戦争の当事国として、アジアの諸国に多くの戦争被害を出した。

戦争を経験した世代は年々少なくなり、歴史や外交、安全保障をめぐる人々の考え方も変化している。

さらに近年では、太平洋戦争をめぐる評価として、修正主義歴史観が台頭して、中国・韓国の人々の間に警戒感が広がっている。こうした背景の下、従軍慰安婦をめぐる問題や徴用工問題が再燃し、解決の糸口が見えない。

中国や韓国との領土問題もこじれにこじれ、いまや日中・日韓関係は悪化の一途をたどっている。

本問は2015年に出題されたものだが、このような外交問題は収まる様子を見せない。

受験生には新聞を読むことを勧める。

このような時事問題を念頭に置いて、アンケート調査をもとに、課題解決の方策を考えることを大学側は要求している。

答案では、国として他国を見る見方と、国籍ではなく、人として相手を見る見方の両方を資料で提示している。

このあたりが、解決の一口になるだろう。


(8)解答例

 

 中国・韓国人の日本と日本人に対する親近感は他のアジア諸国に比べて低い。韓国人の日本・日本人に対する親近感は上昇したが、中国人は日本人についてのみ上昇している。日本人は韓国や中国に対しての親近感は低く、いわゆる嫌韓・嫌中の感情を持つ人が多い。男性よりも女性のほうが韓国への親近感が高いが中国では男女間の差は見られない。20~29歳の若い人で韓国に対する好感を持つ人は多い。30歳以上では年齢が上がるにつれて韓国と中国に対する親近感が下がる傾向にある。年度の推移については、韓国に対して親近感が嫌悪感を上回っている年のほうが多くあり、近年は嫌韓の傾向が強い。中国に対して平成6年以前は親近感が高かったが、平成15年以降は嫌中の傾向が顕著になってきた。

 日本人のいわゆる嫌韓・嫌中の感情は領土問題や慰安婦問題、徴用工事件の韓国最高裁判決などの太平洋戦争の戦後補償をめぐる日韓関係のこじれが背景にある。国の外交問題が国民感情に直接反映している。中国人は日本と日本人に対して冷静に分けて考えることができるのに、日本人は両者を一体視する。中国人や韓国人に友人がいれば、もう少し両国の人たちに対する親近感が増すはずである。両国の日本に対する強気の外交に対するメディアの強硬的な論調に同調して嫌韓・嫌中の感情を引き起こす人が多いのではないか。

 私は韓国人や中国人に対して日本人はもっと友好的な感情を持ってもらいたいと願っている。太平洋戦争の恩讐を越えて、政治家も国民もアジアの人々と協調的な態度をとることが日本の国益に叶うと考える。そのためにはスポーツや文化を通して中国・韓国の人達と交流をさらに進め、個人として彼ら彼女らに接する機会を増やせば、わだかまりはなくなり、親近感が増すに違いない。中国人や韓国人あるいは日本人という類で捉える思考から脱し、個人として相手に対面して評価することが、国際化の時代には必要である。(798字)




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