【国際関係学部、外国語学部】小論文の書き方
(1)はじめに
大学入試小論文は大学・学部や推薦入試、一般入試によって書き方が違う、という話をしてきた。
今回は国際関係学部、外国語学部を取り上げる。
これらの学部は、異文化理解、異文化交流を主題としたテーマで出題されることが多い。
具体的には、言語論やコミュニケーション論、アイデンティティやナショナリズムの問題、異文化摩擦や外国人に対する差別(ヘイトスピーチなど)や人権、外国人労働者、移民と難民、国際政治とグローバリズムなどの問題がテーマとなる。
受験生のみなさんはこれらの問題に気を配り、ニュースや本・雑誌などで知識を蓄えてほしい。
もとより、政治経済、現代社会、世界史、地理の学習は必須となる。
(2)自分の経験で書く
初めに、国際関係学部、外国語学部小論文で書く結論は決まっている。
多文化共生を進め、多様性を確保することが、文化摩擦を無くし、国際紛争や戦争を回避する、外国人に対する差別や偏見を除去する方策であるという結論に持っていけば、採点者の異論はない。
ただ、正しい結論を書けば、合格点をもらえるわけではない。
入試小論文は単純ではない。
問題は、このような多文化共生の推進や多様性の確保が口で言うほど生易しいことではない、多大な困難を伴い、時間と労力がかかるということを肝に銘じたうえで、どうすれば多文化共生が可能になるか、という結論へ至る経緯や方法を筋道を立てて考えることが肝要となる。
つまり、WHAT(何が目的か=結論)よりもHOW(どのように実現するか=プロセス)の部分が評価される。
段落構成では、起承転結のうち、「承」と「転」の比重が大きくなるのが国際関係学部、外国語学部小論文の書き方となる。
このためには、自分の経験を踏まえて書くとよい。
帰国子女や留学経験者が有利となるのは言うまでもない。
上記に該当しない受験生は、国内で英会話学校に行く、学校での外国人教師との交流を深める、友人・知人の外国人の話を聞く、など積極的な異文化体験を日頃から実践することが合格答案を書く近道になる。
本や雑誌で得た知識も重要だが、経験のほうによりウェートが置かれるのが、国際関係学部、外国語学部小論文の書き方の特徴と言っていいだろう。
(3)使用する専門用語
国際関係学部、外国語学部小論文で知っておきたい用語をいくつか解説する。
①グローバリゼーション(グローバル化、グローバリズム)
地球全体の経済や文化が一体化しつつあること。市経済が地球上に普及し、各国経済や文化は連動し、相互依存性を高めている状態。経済活動が国家の枠を超えて相互依存を高め、モノの輸出入だけでなく、ヒトも資金も情報も国境を越えて行き交って、各国経済のつながりが深まる。
②ボーダレス
経済活動を中心に国境の壁が低くなり、ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて自由に行き交うこと。自由化とインターネットの普及が背景にある。
③自民族中心主義(エスノセントリズム)
自分の属する集団の文化や価値観を最も優れたものと考えや態度。
④文化相対主義
文化の間に優劣をつけたり、批判したりすることはできない、とする考え。
(4)注意点
私たちは、無意識のうちに自民族中心主義(エスノセントリズム)的思考に陥りやすい。
自国の文化に対する誇りや愛国心を持つのはけっこうだが、つい他国や多文化と比較しがちになり、ともすると日本文化は世界(アジア)の中で最も優れている、という結論に陥りがちである。
心の中でこのような考え方を持つことまでは否定できないが、文章で表現する場合には工夫や配慮をしてほしい。
小論文は、書き方の「ちょっとしたニュアンス」が重要となる。力の入れ加減、匙加減を間違えると、採点者の印象を悪くして(感情的に書いているというマイナス評価)大幅減点をくらうことになるから注意してほしい。
このような「ちょっとしたニュアンス」の違いは自分ではわからない。
【OK小論文】のオンライン個別授業では、受講生の答案を講師が直接添削しながら、表現のニュアンスを肌で実感してもらっている。
この機会に、利活用していただければありがたい。
注意点としては、言葉の使い方についても書いておく。
「外人」という表記は不可。
書くときは「外国人」と表記する。
面接でも同様。
「中国人は〇〇である」というように、類として扱い、決めつけるような書き方も減点対象となる。
参考文でこのような比較文化、比較民族のテーマで論じ、設問で指示があった場合を除いて、中国人に限らず、「〇〇人とは」という議論の立て方には十分、自覚的であれ、という助言を送りたい。
中国(だけに限らないが)は13億人の人口を有する多民族国家である。
民族によって、ものの考え方や行動様式、価値観は異なる。
それをひとくくりに「中国人は〇〇である」と決めつけつのは、強引であり、暴論であることはおわかりいただけるだろう。
ただし、民族には使用する言語から導かれるものの見方、考え方がある。
言語論のテーマで書く場合には、「中国語を使用する人々の考え方は〇〇である」というような立論は不可能ではない。
それでも、中国語は七大方言、十大方言と呼ばれる方言があり、地方によって方言に基づく世界観が異なる可能性を排除できない。
このように、民族を扱う問題は、大変デリケートであり、十分に熟慮を重ねて考え、書いていかなければ、内容は浅薄になる。
これは私たち日本人の問題を考える場合にも重要である。
日本人論、日本文化論が流行りで、入試小論文にも時おり出題されるが、「日本人とは〇〇である」という型にはめた考えは、わかりやすい一方、必ず落とし穴がある。
これは何も民族問題に限らない。
単純化は、かえって重要な論点を捨象して、学問的な吟味のないまま、一般論に貶める。
このことを十分に肝に銘じて問題に接してもらいたい。
次回は具体的な入試問題を題材として、さらに考察を深めてゆきたい。
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