「子供たちの写真」順天堂大学医学部医学科一般A方式
(1)問題
この写真はフランス人写真家Henri Cartier-Bresson氏が「VIVE LA FRANCE(フランス万歳)」という本の中で発表したものである。この写真の中の子どものうちの1人になったとしたら何を思うか。800字以内で書きなさい。
(2)考え方
これは写真全般について言えることだが、プロのカメラマンが摂った写真は偶然シャッターチャンスが訪れて撮ったものは少なく、ほとんどの写真はカメラマンの指示で被写体がさまざまなポーズを取って、意図的に構成されたものだ。
この写真は、絵画の構図の基本形である三角形を忠実に押さえていることが何よりの証拠だ。
このことから考えると、この写真が撮られている場所と被写体との関係性で言えば、この場所に住んでいる、この場所にたまたまやってきた、というよりも、カメラマンが予めこの場所を押さえて、そこに依頼したモデルを呼んで撮ったものと推測できる。
ありていに書けば書けば「やらせ」に近いものと言っていい。
特にこの写真には、そうしたカメラマンの意図があからさまに感じられる。
だから、この場所や被写体から何かのリアリティを感じ取って書こうと思っても難しく、なかなか考えが浮かんでこない。
ならば、いっそのこと、こちらも完全に話を作ってしまえばいい。
物語を想像して、文章を読んでから改めてこの写真を眺めてみると、結果として整合性が浮かび上がってくる。
こんなことを初めに考えながら、今回答案を書いてみた。
書く際に、最低以下のことを押さえながら書くこと。
①ここはどこか、被写体と撮影場所との関係。
②すべての被写体の簡単な説明。
③被写体同士の関係。
④この写真が撮られる前までの被写体の行動(過去1)。
⑤この写真が撮られる前までの被写体の物語(過去2)
⑥この写真が撮られた後の被写体の行動(未来)。
(3)解答例
今日も学校で誰とも口を利かなかった。クラスメートで誰も僕に声をかけてくれる人はいなかった。登校して、挨拶をしようと近づいても、僕が口を開く前に皆は怖いものを見たような表情を一瞬浮かべて、すぐに背を向け遠くへ離れてしまう。教室ではずっと押し黙ったまま耐えているから、学校から帰ると、いつもどっと疲れる。兄も僕と同じような経験を毎日しているようだった。双子の妹には、学校の様子を聞かない。けれど、学校で何があったかはだいたい想像ができる。
僕の家族がこの国に来て半年が経つ。知り合いのつてで、ここに住み始めた。父は仕事を探しているけれど思うような仕事は見つからないようだ。たまにどこかへ出かけることはあっても、普段はずっと家にいる。僕は家へ帰っても友達はいないから外で遊ぶこともなく、こうして家でゴロゴロしている。初めここへ来たとき、新しい生活には珍しいことがいっぱいで楽しんでいた。けれど、それも慣れてくると家と学校の往復だけの毎日はとても退屈で、刺激もなく辛い。学校に行っても言葉がわからないうえに勉強も難しくて、ついていくのが大変だ。クラスではいつも僕はひとりぼっちで、相手をしてくれる人は誰もいない。せめて取っ組み合いの喧嘩でもする相手がいれば僕の気持ちも少しは紛れるだろう。でも、クラスメート達は僕にどう接すればいいかわからず、いつも困惑の表情を浮かべながら、遠巻きに僕を眺めているだけだ。
僕たち家族はいつまでここで暮らすのだろうか。生まれた村に帰りたい。あの村には友達がたくさんいて、毎日木登りや探検ごっこなど楽しいことがたくさんあった。帰りたいと訴えても、父はいつも黙って首を横に振るだけだ。こんな生活はもうそろそろ終わりにしたい。もうこうなったら、いっそのこと明日にでも、僕だけがこっそりとここを抜け出して、故郷に帰る船を探しに港にでも行ってみるか。僕はいま、このように思っている。
(800字)
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