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【大学入試小論文/環境問題】東京農業大学推薦入試小論文対策

(1)はじめに

環境保護運動には2つの視点があり、根強い対立が続いています。

保全主義か保存主義かがそれです。

保全主義は,「自然の資源を人間が効率的かつ持続的に利用できるように賢明な管理を行う」という立場に当たります。

対して保存主義は、「自然はそれ自体として価値や美を備えていて、人間が手を加えずに、あるがままの姿で保護されなければならない」いとう立場です。

保存主義は,ノルウェーの哲学者アルネ=ネス(Arne Næss,1912~2009)が1973年に提唱したディープエコロジー(deepec010y)にもつながる概念です。

こうした事実を踏まえて、環境問題について、模擬テストをつくりました。

中級~上級者向けの問題になりますが、興味がある人は考えて、書いてみてください。

これは、慶應義塾大学文学部の入試小論文を意識して出題しましたが、もちろん他の大学・学部での小論文の勉強にも使えます。

東京農業大学の推薦入試を受ける人も必ず読んでください。

(2)問題

以下の文章を読んで、あなたの考えを三二〇字以上四〇〇字以内で述べなさい。

東西における環境思想 - 比較思想学会

でググって、宮嶋俊一氏の論文「東西における環境思想 」を読んでみてください。


http://www.jacp.org/wp-content/uploads/2019/11/2013_40_hikaku_15_miyazima.pdf

(3)考え方

参考文に引用されている鶴見和子の文章が示唆的です。

南方(熊楠)は、植物学者として、神林の濫伐が珍奇な植物を滅亡させることを憂えた。民俗学者として、庶民の信仰を衰えさせることを心配した。またムラの寄合いの場である神社をとりこわすことによって、自村内自治を阻むことを恐れた。森林を消滅させることによって、そこに棲息する鳥類を絶滅させるために、害虫が殖え、農作物に害を与えて農民を苦しめることを心配した。海辺の樹木を伐採することにより、木陰がなくなり、魚が海辺によりつかず、漁民が困窮する有様を嘆いた。産土社を奪われた住民の宗教心が衰え、連帯感がうすらぐことを悲しんだ。そして連帯感がうすらぐことによって、道徳心が衰えることを憂えた。南方は、これらすべてのことを、一つの関連ある全体として捉えたのである。自然を破壊することによって、人間の職業と暮らしとを衰微させ、生活を成り立たなくさせることによって、人間性を崩壊させることを、警告したのである。

この文章は入試小論文の環境問題で使えるところが多く、大変に有益です。

また、参考文の以下の文章は、慶應義塾大学総合政策学部小論文に出題されるような視点です。

「南方の運動と思想は故郷、熊野に根ざしたものであり、またその地の自然・社会の全体を体系的に把握する中から生まれたものであった。またそれは、細分化・分断化されていく近代西洋科学的な思考に対して、統合的・総合的な思考を示していると言える。」

東京農業大学推薦入試小論文を受験する人は、新農業基本法にある「農業の多面的な機能」と関連付けながら、農業の自然保護的な機能を総合させて、農業の持つ保全主義的な機能を考えるようにしてください。

新農業基本法の内容:農業の機能として、食料の安定供給確保、農業の持続的発展、農村振興以外にも国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等の多面的な機能が明示された.

もっとヒントを言うと、農業は環境破壊(田畑を作るために野山を切り開く)という面がある一方で、「国土の保全」「水源の涵養」「自然環境の保全」「良好な景観の形成」という環境を守る側面もある。単なる「食料の安定供給確保」や「農村振興」だけでなく、こうした環境保全の機能も合わせ持っている。

地方で高齢化が進み、人口減少が進展すると、農業を通して野山を守る人がいなくなって、環境破壊はさらに深刻化する。

地方で猪や猿などの野生動物が増えて、農地を荒らし、人里に降りてきて人間を襲撃する事件が起こっているのも、こうした農業の多面的な機能が衰えていることの現れとして見ることができる。

以上の論点を入口にして、まとめてもらえればと思います。

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