ウクライナ戦争から2年――ロシア・ウクライナ戦争を振り返るための3冊
こんばんは。ウクライナにロシアが侵攻した2022年2月24日、ロシア・ウクライナ戦争の始まりから早くも2年が経とうとしています。一刻も早い終戦を願いながらも、まだ戦争の終わりが見えません。
この間、文春新書編集部ではロシア・ウクライナ戦争をめぐる本も何冊か刊行してきました。この戦争の時代にあって、私たちは何を、どう考えたらいいのでしょうか? 国際ニュースをどう見ればいいのでしょうか? 考えあぐねているときに手掛かりになってくれればと、ロシア・ウクライナ戦争を振り返るための文春新書3冊をご紹介します。
①小泉悠『ウクライナ戦争の200日』
ロシアの圧倒的な武力を前にウクライナは一網打尽にされてしまうのではないか、ゼレンスキー政権はキーウを離れて亡命政府にならざるを得ないのではないか、ロシアの核兵器使用の可能性がきわめて高いのではないかーーという悲観的な見通しが専門家たちの間でも語られていた戦争開始直後からの200日。その間のロシア、ウクライナの双方の動きを追いつつ、この事態を前に私たちは何を考えるべきなのか、プーチンの世界観とはどのようなものなのか、小泉悠さんが以下のように、7人の識者と語り合った緊迫感ある対談集です。いま読み返しても古びない話がふんだんに交わされています。
1: ロシアは絶対悪なのか ×東浩紀
2: 超マニアック戦争論 ×砂川文次
3: ウクライナ侵攻 100日の「天王山」 ×高橋杉雄
4: ウクライナの「さらにいくつもの片隅に」 ×片渕須直
5: 「独裁」と「戦争」の世界史を語る ×ヤマザキマリ
6: ウクライナ侵攻 戦争の分岐点 ×高橋杉雄
7:ドイツと中国とロシアの世界勢力図 ×マライ・メントライン×安田峰俊
②小泉悠『終わらない戦争』
2023年9月に『ウクライナ戦争の200日』の続編として刊行された『終わらない戦争』。ちょうど500~600日頃までの動きを収めたのが本書で、その大半は『ウクライナ戦争の200日』でも小泉さんと主に戦況を論じられた防衛研究所の高橋杉雄さんとの対談です。そちらはリアルタイムの戦況をめぐる対話ですが、冒頭ではやはり防衛研究所勤務で『戦争はいかに終結したか』(中公新書)の著書がある千々和泰明さんと、「ウクライナ戦争を終わらせることはできるのか」をめぐって、20世紀の戦争を振り返りながら理論的な古びない話を繰り広げられています。こちらは今後の戦争の行方を、ひいては21世紀の戦争の行方を考える上でも、さらに日本の平和主義を考えるうえでも示唆に富むものになっているので、ぜひご一読いただければ。
法政大学教授の熊倉潤さんとの、プーチンと習近平をめぐる対話も示唆的です。
Ⅰ:ウクライナ戦争を終わらせることはできるのか ×千々和泰明
Ⅱ:プーチンと習近平の急所はどこにあるのか? ×熊倉潤
Ⅲ:ウクライナ戦争「超精密解説」 ×高橋杉雄
Ⅳ:逆襲のウクライナ ×高橋杉雄
Ⅴ:戦線は動くのか ×高橋杉雄
Ⅵ:戦争の四年目が見えてきた ×高橋杉雄
③高橋杉雄編著『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』
小泉悠さんとの名コンビで知られた防衛研究所の高橋杉雄さんが編著者としてまとめられたのがこちらの1冊です。20世紀の戦争終結を論じられたのが『終わらない戦争』における千々和泰明さんだとすれば、同じく理論的なフレームを以てして、ウクライナ戦争に端を発する「大国間競争」の時代の21世紀の戦争の特徴、さらにはそれゆえの「終わらない」構造を論じます。テーマは専門的にもかかわらず、開かれた平易な説明がなされ、いま改めて読まれてほしいと願っています。
第1章 ロシア・ウクライナ戦争はなぜ始まったのか 高橋杉雄
第2章 ロシア・ウクライナ戦争
――その抑止破綻から台湾海峡有事に何を学べるか 福田潤一
第3章 宇宙領域からみたロシア・ウクライナ戦争 福島康仁
第4章 新領域における戦い方の将来像
――ロシア・ウクライナ戦争から見るハイブリッド戦争の新局面 大澤淳
第5章 ロシア・ウクライナ戦争の終わらせ方 高橋杉雄
終章 日本人が考えるべきこと 高橋杉雄
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