二つに折った紙が入っていた。手紙だ。彼女を見返すと、にやにやしている。――『天使は奇跡を希う』031
カウンターから戻ってきた成美のトレイには、親子丼が特盛で載せられていた。
ぼくの隣に座り、レンゲを使ってもくもくと食べ始める。
ぼくの幼なじみは、どちらも大食いだ。
普段は「怒ってるの?」と聞かれる成美の表情も、食べているときはじんわりと幸せオーラがにじんでいる。
それがぼくは、ちょっといいなと思っている。
「運動してないのに、よく太んないよなあ」
健吾がしみじみ言うと、成美は顔からさっと幸せオーラだけを消し、
「……ちゃんと太りますが何か」
「「えっ」」
ぼくと健吾の声が重なる。
てっきりそういう体質なのだと思っていた。
だって、ぜんぜん太っているように見えない。
ぼくと、同じことを考えたのだろう健吾のまなざしが、該当部分を探そうとして――ある一点に吸い寄せられてしまった。
成美が大きな胸を隠す。
「最低」
「いやいや、たまたまだって!」
「男はしょうがないんだって!」
成美に睨まれ、ぼくと健吾は必死に言い訳する。
ぼくたち三人は、こんな感じだ。
ぼくと成美が付き合うようになってからも、それは変わらない。
自然なふうでもあるけど、三人が三人ともちょっとずつ気をつけて成立させている部分もあるかもしれない。でもそれって悪いことじゃないと思うんだけど、どうだろう。
教室に戻って席に着くと、星月さんがくるりと振り向いてきて「机の中を見て」というジェスチャーをする。
それで見てみると……二つに折った紙が入っていた。手紙だ。
彼女を見返すと、にやにやしている。
げんなりしつつ広げると、紙には一行、こう書かれてあった。
次のミッション:ユーカとの今治城deお散歩をプレゼント♡♡♡
ハートの三連続が、うざいことこの上なかった。
七月隆文・著/前康輔・写真