井の頭公園の散歩(20)アジアゾウはな子の死亡
井の頭自然文化園の一番の人気者といえば、アジアゾウの「はな子」でした。ご存知のように、はな子は2016年(平成28年)5月26日に69歳で死亡しました。死因は「継続的な横臥で肺のうっ血を引き起こしたことによる呼吸不全」と発表されています。
ゾウは横向きに倒れたままにしておくと内臓を圧迫して死亡してしまうということです。そのため、井の頭自然文化園では上野動物園と多摩動物公園と連携を取って、もしそうなった場合は担当者が駆けつけてロープなどにより起立させることになっていました。朝の8時30分に横臥状態のはな子を発見し、夜間監視カメラを確認したら当日の深夜1時25分頃に横臥したことが分かりました。緊急連絡で各動物園からも担当者が駆けつけましたが、起立が叶わず15時過ぎに死亡と診断されました。
はな子は、1947年(昭和22年)春、タイのバンコクの農園で生まれ、日本の子どもたちの要望を受けて、2歳半頃の1949年(昭和24年)9月2日に神戸港に到着し、9月4日には上野動物園に送られ「はな子」と命名されました。そして、1954年(昭和29)に上野動物園から井の頭自然文化園に移動して、以来62年間、井の頭自然文化園で国内最長齢の69歳まで過ごしました。
本来、子どものゾウは群れで暮らし、群れに守られて成長するとのことです。そのことを考えれば、群れから離されて狭いコンクリート床のゾウ舎での環境はいかばかりだったのでしょうか。
しかしながら、職員の手厚い飼育と、会いに訪れた人間との、あっただろう交流は、ストレスを軽減し多少でも長く生きることにつながったと思えるのです。テレビで死亡のニュース速報が入った夜、ゾウ舎に一番近い真裏の市道に駆けつけましたが、同じ思いの十人ほどの住民の姿がありました。
そして、9月3日に異例といわれた「アジアゾウはな子とのお別れ会」が開かれ約2800人が献花し、それぞれのはな子にお別れをしました。