おいしくないものをたべてしまったみたい
周りをぐるっと見渡しても、わたしはどうやらひとりみたいです。ひとりの夜は、大敵。だれもとなりにいない夜は、大敵。わたしがわたしのことを抱きしめられない夜は、大敵。だれにもかわいがってもらえない夜は、大敵。なにひとつがんばれなかった夜は、大敵。11月6日の夜は、大敵。今日の夜はきっと、なにもかもだめ。きみのとなりを抜け出して、トイレに行って、そのままベッドに戻りたくなくなっちゃった。冷蔵庫のまえにしゃがみこんで、アルコール度数が7パーセントのおいしくないお酒を飲む。おいしくない。たのしくない。さみしい。散歩に出たい。らーめんをたべたい。こわい通り魔に刺されてそのまま死んでやりたい。そのままかえりたくない。どこにも戻りたくない。わたしの居場所なんてほんとは最初からなかったんだってあきらめたふりして、でもあきらめられないこころが何度も何度もきみがいる方向をちらちら見てしまう。けど、わたしは戻りたくない。ねこみたいにふらふらして、きみのことを不安にさせたい。わたしが勝手に不安になってるのとおなじくらい。きみが言った言葉のひとつひとつ、わたしにとって重くて、重苦しいということを、そろそろ自覚してほしいのです。壁に刺さった画鋲を、爪でいじくってみても、なかなか抜けないみたいに、ずっと抜けない。抜けないよ。だってきみのことばに刺されたからね、わたし。こころを、刺されたんだよ。きみはわたしのわるいところを容赦なく指摘するね。わたしは、できるだけやさしいことばをきみにかけるのに。なにを言うかよりも、なにを言わないかのほうが大切にしてるのにな、わたし。これじゃまるっきり、まえといっしょだ。学ばないな。学べない。まえの恋人とのあれこれを通して学んだはずのに、いやとか、むりとか、やだとか、ありえないとか、やめてを言えなくて、だめです。つよいことばを使うきみよりも、それに対してやだって言えないわたしがわるいという思考になってしまうのが、そもそもだめ。ってわかってるのに、やめられない。そう。まるいからね。人生ってのはまるいから。まえにも同じようなことした気がするな。のくりかえし。こればっかり。ばかみたい。ぜんぶばかみたい。ごめんね、なんにもうまくできなくて。エッセイ、簡単だね。じぶんが経験したことを書くの、簡単だね。簡単で、平凡な文章しか、書けなくて、ごめんね。こんなのやだ。こんなのやだよ。こんな感情にさせるひとと、いっしょにいたくないよ。やめたい。やめさせて。ぜんぶ。相手のいいところを一生懸命さがして、わるいところに目をつぶっても、いつか目は開けちゃうものなの。まばたきしないと、あかるいがわかんなくなるから。だから最初から、いいところなんて見ないほうがいいのかもね。わすれて。今日書いた文章ぜんぶ、駄文。いや。きみが言う通り、エッセイなんて、日記なんて、わたしが書く文章なんて、なにも突き詰めなくても書けるものだから。駄文。たぶん、駄文。わたしの感性から生み出されることばなんて、なんにもよくない。あ、やっぱりあったかいらーめんたべたいな。わたしがどれだけ音を立てても、きみはおきないから、もういいのかもね。しれっと、いなくなるほうがいいのかも。きみより、わたしのこころのがだいじだし。きみより、わたしは、わたしが書く文章のほうがだいじだから。