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見つからない話

探し物をしていた。
今使っているトリートメントがなくなりそうなので、買い足したいのだ。
しかし、このトリートメントがどのトリートメントなのかわからない。


状況を整理しよう。
ドラッグストアのヘアケアコーナーをうろうろしながら、記憶を巡らせる。


私は、ディズニーが好きだ。
特に、『アラジン』のアラジンが一番好きで、
次に『塔の上のラプンツェル』のラプンツェル、
僅差で、『アラジン』のジャスミンが好きである。

今までは、定期的にディズニーコラボをする「アンドハニー」のシャンプー・トリートメントを使用していた。ラプンツェルコラボデザインのボトルを購入してからは、詰め替え用を買い足してはそのボトルに継ぎ足して使用していた。しかし、最近、「LUX」という別の銘柄が『アラジン』のジャスミンデザインのものを発売していることを知った。ジャスミンかラプンツェルかなら、ラプンツェルの方にわずかに軍配が上がるのだが、そもそも、グッズの供給量として、ジャスミンのものはラプンツェルのものに比べると貴重である。ということで、中身が無くなったタイミングでラプンツェルボトルを廃棄し、ジャスミンの「LUX」を使用し始めた。

私は髪が長い方である。シャンプーはワンプッシュで充分なのだが、トリートメントはふんだんに使用する。よって、シャンプーよりもトリートメントの方が先に無くなるため、トリートメントのみを買い足さなければならない状況がやってくる。

何を買い足そうか。
いつもは「アンドハニー」の詰め替えを買っているが、「LUX」に変えたところである。特に今不満はないので、このまま「LUX」の詰め替えを買ってもいいが。本来はシャンプーとリンスで銘柄を揃えるべきなのだろうが、ジャスミンデザインは、いわゆる期間限定の香りなので、全く同じものの詰め替え用は売っていない気がする。だったら、せっかくの機会なので、今まで使ったことのない、新しい銘柄を試してみるのもいいかもしれない。ただ、ボトルは今のジャスミンを使い続けたいので、何かの詰め替え用を買って、ジャスミンボトルに入れよう。

ドラッグストアを徘徊し、売られているものの中で、1番気になるものを買った。
デザインというか色合いが綺麗で可愛くて、香りのテスターもいい感じ。


自宅のお風呂場で、トリートメントを詰め替えながら思う。
これ、いい感じだったらリピートしたいけど、パッケージ捨てちゃったらどれかわかんなくなるかな?写真撮っといたほうがいいかな?
うーん。
まぁ、さすがに覚えてるでしょ!


覚えていなかったのである。
完全に、どれか覚えていないのである。


実際に使ってみて、劇的に良いという感じもなかったけれど、不満もなかった。でも、香りを褒められた、というか、好きな香りだというようなことを言われたので、とりあえず、続投しようと思ったのだ。
名前は憶えていなかったけれど、ドラッグストアでパッケージのデザインを見れば、これだ!ってなるだろうという軽い気持ちでやってきたが、どれもまったくピンとこない。
綺麗な薄紫だったような、いや、虹色だったような、、、。
そのふんわりした記憶と一番近いものの香りをかいでみたが、ピンとこない。そのまま詰め替え用を買うのは怖いので、1回分が小分けになっているものを買い、試してみることにした。


その日の夜。
浴室にて。
どうも違う気がする。
香りが完全に違う気がする。


翌朝、私は出勤前に浴室へ行き、小さなピルケースにトリートメントを入れた。しっかりとふたをして、カバンへ入れる。現物をもってドラッグストアへ行き、その場で嗅ぎ比べようという魂胆である。

いったい自分は何を必死になっているのだろう。
不満はないけれど、そこまで気に入っていたわけではないのに。
好きな香りと言ってくれた人も、そこまで深い思いを込めていったわけでもなさそうだったのに。

でも、なんだか、ここまでくると、どうしても、手に入れなければならないという想いに取りつかれてしまった。私はやり遂げなければならない。気がする。


そう意気込んでやってきたものの、どうも、見つけられない。
そもそも香りのテスターが置かれていないものもある。
いろいろ嗅ぎまわっているうちに、もう、どれを嗅いでもよくわからなくなってきた。

朦朧とした意識の中、一番、香りが似ているような気がするものを見つけた。これな気がすると思った。でも、パッケージに見覚えがない。虹のようだった気がする。薄紫っぽいというか、シャボン玉とかオーロラとかそういう感じの虹っぽさだった気がするのだ。でも、目の前のパッケージは濃いピンクと黄色のグラデーション。グラデーションではあるが、薄紫っぽい要素がない。それから、詰め替えボトルを持った時の感触もしっかりしている。今、目の前のピルケースに入っているトリートメントは、わりと緩いように見える。香りが気に入ったのだから、これにしてもいいのかもしれない。でも、香りも、近い気はするけど、全く同じだという確信はもてない。どうしよう。
やっぱり、パッケージ的にはこれかな、と思うものがある。でも、テスターがない。これに賭けてみるか?どうしよう。


その日の夜。
浴室にて。
どうも違う気がする。
香りが完全に違う気がする。

私は賭けに負けたのだ。
自宅のお風呂場で、トリートメントを詰め替えながら思う。
なんか、絶対、あのピンクと黄色のグラデーションのやつだった気がしてきた。薄紫っぽいというのが完全な記憶違い。たぶん、シャンプーの方がピンクと水色のグラデーションのデザインで、買うときに「こっちの方が好みの色合いだな~。薄紫っぽいし。」と思った気がウするから、それで記憶が混ざってしまったのかもしれない。トリートメントの感触についても、ピルケースで持ち運んでいるものは暑い中持ちまわしたから緩くなっていて、店頭に並んでいるものはエアコンで硬くなっていたのだろう。絶対そうだ。

そう思えば思うほど、絶対にアレだったのだという気持ちが強くなってきた。
でも、もったいないので、とりあえず、今のものを使い終わるまでは私にはどうしようもできない。これ使い終わったら、絶対にアレを買うんだ。そう決心した。
ただ、店頭に行ったら、きっと、「やっぱり、コレじゃない気がするんだよな~。」ってなりそうだな、という一抹の不安もある。そして、結局、どれが正解だったかどうかは、もう誰にもわからない。
どう転んでも何も起こらないし、何も良くならない。どうしようもない話である。
実際にその商品が見つかっても見つからなくても、私の中で「これが答えだ!」という落とし前をつけない限りは、きっと一生見つからないのだ。

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