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せっちゃんビバルディ【構想メモ】

第一章 大殿小学校と終戦

♪空襲警報聞こえてきたら
今は僕たち小さいから
大人の言う事よく聞いて よく聞いて
入っていましょう防空壕♪


暗い防空壕の穴蔵の中で母と兄とでこんな歌を歌っていた。
誰が作った歌かはよう知らんけど、みんな歌っとった
グオオオオオン
とB29の音が聞こえる。サイレンが鳴る。
うるさいんは歌で消しちゃろ。あぁ早く戦争終わらないかな。
うちの事はみんなせっちゃんって呼びよる。大殿小学校1年生。
昭和20年の頃の話しや。
小学校のクラスの2/3はお父さんがいなかった。
お父さんたちは戦争で死んでもうた。
うちのお父さんも戦死したと聞いて遺髪言うんを受け取った。
友達もたくさん死んだ。
きみえ、いさお、ひろこ、えいこ、やいこ、しんた
みんな病気や爆弾で死んだ。
かわいそうやった。おじちゃんの住んでる広島ではえらい爆弾が落ちてみんな難儀だったそうじゃ。従兄弟生きとるみたいやけどえろう大変な事になっていて、うちも何度か行った広島の街は何ものうなったそうじゃ。
おじさんが生きとるかはまだわからん。
夏休みの8月15日。学校に集合やったんやけど誰もおらんかった。
米屋町の本屋さん前でラジオを流してて、人だかりがして大人たちはみんな泣いとった。
うちは泣いている栄子おばさんに聞いてみた。
「みなどうしたんじゃろ泣きおうて」
栄子おばさんが教えてくれた。
「戦争は終わったのじゃよ 日本は負けたんよ」

え?終わったん?やった!やっと終わった。
電気消したり、空襲警報で 机の下にもぐらなくてよくなったんや
これからはたくさんたくさんピアノと水泳をやろう。
出来なかった事を全部やっちゃろう

もうB29は来ない。爆弾も落ちない!やった!お兄に知らせようお兄も喜ぶじゃろう。
きっともうびっくりするじゃろう。
ご飯は食べれるんじゃろうか?代理食ではなく白いお米が食べたい
いつかいつか宮沢賢治で読んだセロを弾くゴーシュになっちゃろう。
お城でオーケストラを弾くんじゃ

日本中の大人が大泣きしていた日、うちは嬉しくてたまらなくて、米屋町内をわけもわからず走り回っとった

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「せっちゃんビバルディ」


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