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その国の王さまは
その国の王さまはドローンでした。
身軽で器用で小回りの利く王さまで、朝な夕なに王国を隈なく見回り、人びとが暮らしに困っていないか、迷子はいないか、壊れた橋や道路はないか見守っています。
空を見上げると、小さいドローンをたくさん引き連れている王さまの姿を見ることができます。
王さまが、新しく生まれたドローンを連れて王国のあるべき姿を見せ、何を守るのかを教えているのです。照明を灯した夜間訓練は人びとの目を楽しませます。
王さまはドローンが生まれる瞬間に立ち会います。新しいドローンは生まれた瞬間に目の前にいる王さまを親だと思い、終生の忠誠を誓います。
小さなドローンは飛ぶもの、泳ぐもの、掘るもの、火の中はもちろん、インターネットの中を得意とするドローンもあります。
育児ドローン、受粉ドローン、ハラスメントやヘイト対応が得意なドローンや街のゴミを拾うドローン、壁や天井や物陰に潜んで聞き耳をたてるのが得意なドローン、まさに痒いところに──、そういえば手の届かない背中の痒みを掻いてくれるドローンもいます。ただし、王さま好みのきれいなおねーちゃんの後をつけるドローンがいることはお妃には内緒です。
人びとは王さまのおかげで安心して豊かな生活を送っていましたが、あるとき王国の繁栄を妬んだ国が攻めてきました。
王さまは、国じゅうの小さなドローンを集め、持てる限りの武器を身につけさせると、「さぁ、我に続くのだ! 侵略者を倒せ!」と自ら部隊を率いて戦場に向かいました。
小さなドローンたちはみな王さまに続きます。
ところがよく見ると、小さなドローンたちはあっちこっちへ向かっています。
「こういうこともあろうかと、余の影武者ドローンを作っておいてよかったな。大臣、戦地に送ったドローンの代わりを急いで作るのだ」
王さまはそう言うと、おねーちゃん追跡ドローンを使って遊び始めました。(完)
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身の回りの物が王さまになったら、どのような王さまで、その国はどのような国で、人びとにはどのような暮らしが展開するのか。「その国の王さまは」…
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