漫画『ウスズミの果て』について

僕が人生でもっともハマった「作家」は、間違いなく弐瓶勉だ。
アニメ「シドニアの騎士」で衝撃を受けて原作を全部買ってきて、ちょうどそのころ「BLAME!」の新装版が発売になり「アバラ」も買い、古本屋で「バイオメガ」「NOiSE」「ブラム学園」その他を買い漁って、「人形の国」の連載が始まり、彼の描く作品に惚れて、世界観に惚れて、価値観に惚れて、とにかく全部読みたかった。現在進行形で「タワーダンジョン」が連載されていて、幸せなことこの上ない。


なので、「ああ、この作家は間違いなく弐瓶勉が好きなんだな」と感じると無条件で応援したくなる。


例えば代表的な作家で、コトヤマという漫画家がいる。
コトヤマ先生は間違いなく弐瓶勉がお好きだとおもう。


さて、「ウスズミの果て」についてだ。


ある日、趣味の本屋探検をしていたとき。このマンガのサンプルとして、冒頭数ページが読める小冊子がビニール紐でぶら下がっていた。あるいは、単行本1巻の冒頭だけフィルムを巻かず試読できるようにしてあった。詳細はまるで覚えていない。

その数ページ、開いて5ページ目の、大きなコマ。(単行本1巻では10ページ目だ)

そのひとコマを見て、「確実にこの作家さんは弐瓶勉が好きだ」と確信して、その場でサンプルを閉じて単行本既刊3巻をレジに持っていった。
このスピード感で購入を決めたせいで、手に取っていたのがサンプルだったのか単行本だったのかまるで覚えていない。


そして、家でこのマンガを開いて、それはもうにっこりしてしまった。


僕はいわゆる「ポストアポカリプス系」が好きというわけではないように思う。
あくまで弐瓶勉が好きなだけで、ポストアポカリプスという作品ジャンルを好んで見るわけではない。

では、弐瓶勉作品の何が好きなのかと言われると、これもまた言語化が難しい。
自分の中で明言することができない、曖昧な感覚それ自体が愛おしいように思う。

「ウスズミの果て」は、文明社会が滅んでしまった世界を一人取り戻そうとしている主人公、「丑三小夜」と相棒の「クー」の『任務』が描かれる。

僕たちが生きている社会も、今すべての文明社会の利器が使え無くなれば、途端に無限で広大な世界に感じるのだと思う。池袋から新宿までは埼京線で一駅だが、歩けば1時間以上かかる。文明の発達は世界の短縮でもある。


生々しい「人類の滅んだあと」という世界で、任務のために主人公が生きている。

「死」に埋め尽くされてしまった世界。無ではなく、死が近くにある。
漫画を読んでいるだけのはずなのに、作中の静寂がキーンと読者である自分にまで伝わってきそうな、奥深い作画。

こういう世界に、主人公がかわいい少女とマスコットなのが、そりゃもう本当にたまんねえのよ。「少女終末旅行」が出たときもかなりワクワクしたし、「廃墟メシ」が出たときもワクワクした。
で、この「ウスズミの果て」は、世界もハードコアでヘビーなのに主人公が激烈にかわいい。
たまんねえ。
しかも画力。画力がバケモノ。世が世なら断罪されるレベルで絵がうめえ。たまんねえ。
俺が観たかった作品のひとつだと言える。確実に。


既刊3巻まで読んで、どんどん世界の広がり、物語の深みが見えてきている。この先の展開が非常に楽しみだ。


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