寂しいのは親の方【ショートショート】
「ママ、私がいなくて寂しい?」
そんなLINEを送ってきたのは、昨日から一人暮らしを始めた娘だ。
寂しいかと言えば、間違いなく寂しい。
ずっと一緒に暮らしてきた娘。
迷惑や心配ばかりかけてきた娘。
人一倍手のかかる娘が巣立っていったのだから、寂しくないわけがない。
けど、寂しいとは言いたくない。
ママは強いんだって、あんたがいなくても平気だって、そんなところを見せたい。
「ママはね。あなたが寂しいと思えば寂しいし、楽しいと思うなら楽しいんだよ」
カッコつけてこんなLINEを送った。
きっと感動して、『ママー』とか言うLINEが来るはず!
だけど……。
『寂しい』と娘に聞かれたからだろうか、無性に会いたくなってしまった。
私は涙をこらえながら。
いや、こらえきれず泣きながら車を走らせ、家に帰った。
駐車場に停めた車の中で一人泣く。
寂しい。
会いたい。
でも、もう少し待てば、娘からLINEが来る。
精一杯強がったママに甘える、あの子らしいLINEが。
私は寂しい気持ちを精一杯抑えながら、娘からのLINEを待った。
すぐ返事が来るはず。
もうすぐ、返事が来るはず。
…………来ない。
もう30分待った。
もしかして見てない?
いやいや。
きっと感動してどう返信しようか悩んでるんだ。
もう少し待てばLINEが来るはず!
…………来ない。
おかしいな。
もう1時間も経つのに。
ピコン♪
あ!
やっと来た!
すごく嬉しくて、今までにないスピードでLINEを見る。
すると……。
「グラタン作ったー!」
全然関係ないLINEが来た。
ママの強がりはどこにいった……?
ピコン♪
また来た!
今度こそ!
「おー、美味そうだなぁ」
パパだった。
私の強がりを返せ!
〈了〉
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