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秘密の恋

最近隣の家に引っ越してきた健司。

彼とのおしゃべりはとても楽しい。

初対面とは思えないくらいあっという間に打ち解けた私たちは、毎晩バルコニーでおしゃべりし、笑い、人生のことを話しました。

健司は魅力的でユーモアがあって、いつも優しい好青年だと思いました。

ある日のこと。
私はいつものように新聞を取りに行きました。
それからパンを焼いて、コーヒーを入れて。
いつもと同じように新聞を読みます。

すると、新聞の見出しに健司の写真が載っていました。
その記事は、彼が逃亡犯であることを報じていました。

ショックでした。
その記事を読むことができないほどの衝撃を受けました。

あのユーモラスで優しい健司が、逃亡犯だなんて。

(他人の空似だよね)

私は無理やりそう思い込むことにしました。

ですが……どうしても気になります。

普通に接しようと思っても、どこかぎこちなくなります。
健司に「なにかあった?」と、聞かれるほどに。

(このままじゃダメだ)

そう思った私は、健司について調べることにしました。
まずは、逮捕されるきっかけになった事件からです。

図書館で当時の新聞を探します。
それから、収容された刑務所のこと。
刑期がどのくらいなのか。
被害者の人数は何人なのか。

健司は無関係だと思いたい。
他人の空似であって欲しいという一心で……。

必死に調べて分かったことは、健司が間違いなく逃亡犯だということ。
そして、刑期が無期懲役だということ。
逃げてから5年も経っていることだけ。

健司は無関係だと、他人の空似だと思ったのに……。

健司が逃亡犯だという事実だけが重くのしかかります。

(一体どうすれば……)

健司は逃亡犯。
だから、警察に通報するべきだ。
それはわかっている、わかっているけど……。

私は健司と話をしようと思いました。
できれば、自首してほしい。
そう思ったからです。

その日の夕方、健司の家に行くと……。

誰もいませんでした。
私のよそよそしい態度に、バレたとでも思ったのでしょうか。

気の抜けた私は、ひとり健司と楽しくおしゃべりをしたバルコニーで、空を見ています。

こんなこと、思っちゃいけないんだけど。

……健司、どうか無事でいて下さい。

〈了〉

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