プロポーズ【ショートショート】
今日、彼女にプロポーズをする。
そう決意し、花束を持って彼女の家のドアをノックした。
「はーい」
可愛らしい声が聞こえた。
俺はドアに近づき、ポーズを取ってその瞬間を待つ。
勢いよく開くドア。
バンッ!
ドアが俺に当たった。
はずみで落ちる花束。
よろける俺。
グシャ。
踏みつけられる花束。
ツルン!
滑る俺。
「危ない!」
彼女は、転びそうになる俺を抱きかかえた。
なんてことだ。
まさかプロポーズをしに来て、彼女にお姫様抱っこをされるとは。
恥ずかしさに顔を赤くする。
すると、事態を飲み込めない彼女が、不思議そうな顔で聞いてきた。
「ねぇ……何しに来たの?」
俺は彼女の腕の中で必死に説明した。
プロポーズをしに来たこと。
花束を用意したこと。
精一杯カッコつけていたこと、
ドアにぶつかったこと。
よろけて花束を踏んたこと。
滑って転びそうになって、助けられたこと。
……思わず泣きそうになった。
あまりにもかっこ悪い。
きっと、断られるだろう。
そう思った。
涙でうるんだ目で彼女を見つめる。
すると……。
「はい。喜んで」
彼女は満面の笑みでそういった。
まさかの返答に、涙がこぼれた。
彼女にお姫様抱っこをされながら、涙を流す。
嬉しいけど、やっぱりカッコ悪い。
俺は、プロポーズのやり直しを要求した。
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