不審者【ショートショート】
コツコツコツ。
夜、自宅への帰り道。
誰かにつけられている気がした。
コツコツコツ。
振り向くと大柄な男が2人、俺の後をついてくる。
(もしかして、つけられてる?)
不審に思った俺は、本当につけられているのか見極めてやろうと思った。
わざと、いつもと違うところを曲がってみる。
コツコツコツ。
やはりついてきた。
だが……身に覚えがない。
なぜ俺をつけてくる?
誰か、探偵でも雇ったのか?
一体なんのために?
不倫調査?
いや、俺は結婚していない。
昨日見た映画の影響だろうか。
つけられている、となれば逃げたくなる。
そう!
映画の主人公のように!
……まぁ、なぜつけてくるのかは分からない。
だが、取り敢えず小走りで逃げる。
タッタッタッ。
向こうも小走りになった!
間違いない!
あいつらのターゲットは俺だ!
そう思った俺は、全力で逃げた!
いつもと違う道を、わざと細かく曲がりながら走る。
だが……男二人は諦めない。
同じ道をどこまでも追いかけてくる。
そんな追いかけっ子をしばらく続けた後、ふと疑問が湧き上がった。
男二人は、あからさまに俺の後をつけている、
それはもう、バレているのだ。
なのになぜ、どこまでも追いかけてくるのだろう。
もし探偵だとしたら、尾行が下手すぎる。
そう思った俺は、走るのをやめた。
「おーい」
後ろから声が聞こえる。
「おーい、待ってくれー」
振り向くと、ずっと追いかけてきた男二人が、俺を呼んでいた。
(一体何事だ)
足を止めて二人が来るのを待つ。
暗くて見えなかった男達の顔が見えた。
「兄ちゃん足速いなー」
双子の弟だった。
〈了〉
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