想像すると怖い話【ショートショート】
明日は七夕。
子どもたちは短冊に願いを書いて、次々と飾っていく。
虫が好きな少女は、「虫と話がしたい」と書いた。
(虫と話ができたら、どんなに楽しいだろう)
そう想像する少女の顔に、自然と笑みが溢れる。
その様子を見ていた神様。
気まぐれか、それとも戯れか。
サッと手を振ると、夜空の星々が輝きだしだ。
すると……。
少女の周りに無数の虫が集まってきた。
まるで、夜の街灯に群がる虫たちのように。
不思議なことに、虫たちの言葉がわかる気がした。
むしたちと楽しく会話をする少女。
七夕の願いが叶った瞬間だった。
……楽しい時間には終りが来る。
朝日が昇り目を覚ますと、少女の不思議な力は消えていた。
「ゆめ?」
ふと窓を見ると、隙間がないほどたくさんの虫たちが集まっていた。
ベランダに出られる窓にも、お隣が見える窓にも、たくさんの虫たちがいる。
「昨日は楽しかったよ」
そう言っているように見える。
その様子を見て微笑む少女。
「ゆめでもいっか」
少女は虫たちに手をふると、ベッドから飛び起きた。
〈了〉
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