ドラマっぽいあれ【ショートショート】
「もぅ、知らない!」
そう言って彼女は家から飛び出した。
「何ぼーっとしてんの! 早く追いかけなきゃ!」
「そうだよ、早くいけ!」
友達にそう言われ、慌てて彼女を追いかける。
「くそっ、どこに行ったんだ」
必死に探し回るが見つからない。
(これでサヨナラなのか。俺達、これで終わりなのか)
彼女の子供っぽいところが好きだ。
無邪気に笑う笑顔に、何度救われたことか。
でも……それが負担だったのかもしれない。
俺は……彼女のことを、本当に考えていたのだろうか……。
そんなことを考えながら、必死に彼女を探す。
今見つけなければ、二度と会えないかもしれない。
そう思った、その時!
陸橋の上で、遠くを見つめる彼女を見つけた。
「かおりーーーー!!」
全力で彼女の名前を呼ぶ。
その声に反応し、逃げようとする彼女。
「ちょ、待てよ!」
ダッシュで駆け寄り、逃げようとする彼女の腕を掴む。
「離して!」
「なんでだよ! 俺達、上手くやれてただろ?」
「だって……だってさ……だって、あの娘のことばっかり見てるじゃん!」
「みてねーよ」
「うそ! 見てたもん!」
「みてねーって!」
そう言って、俺は強く彼女を抱き寄せた。
「お前だけだ」
「……」
「俺が見てるのは、お前だけだから」
「……ほんとに?」
「あぁ」
彼女の手がおれの腰に周り、力強く抱きしめてくる。
そこに愛情を感じながら、俺は彼女をもう一度、ギュッと抱きしめた。
「俺を信じろ、絶対に離さないから」
「うん……うん!」
彼女の肩が小刻みに揺れている。
その震えを止めるように、俺は彼女を抱きしめ続けた。
(ぜってぇ幸せにする)
そう、こころに誓いながら。
〈了〉