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トイレの水漏れと人間関係【ショートショート】
どこからか、水の流れる音が聞こえる。
チョロチョロ。
チョロチョロ。
(水の音? どこだろう)
音のする場所を探すと、どうやらトイレから水が流れているようだ。
ネットでトイレの水について調べる。
すると、水漏れしていることが分かった。
(水漏れか。どうすればいいんだろう)
色々調べてみると、道具さえあれば自分で自分直せない、ことはないみたいだ。
けど、ここはアパート。
勝手に修理をすると、後々問題になることもあるらしい。
そして、トイレの修理は大家さんがやるべきだ、ということも分かった。
慌てて大家さんに修理をお願いする。
ただ、業者さんは忙しく、すぐには対応できないらしい。
「いつ修理に来ますか?」
そう聞いても、分からないとしか言わない。
修理が来るまでどうすればいいか聞いたところ、ヤカンや鍋で水を流してくれと言われた。
「修理が決まったら連絡がほしい」
そう言ったが、分かったと言うだけで、日にちは決まらなかった。
その日から、ヤカンでトイレに水を流す日々が始まった。
トイレにヤカンで水を流すのは、気持ちの良いものじゃない。
特に大は……。
自分のとはいえ、嫌な気持ちになる。
トイレに水を流したヤカンで、お湯を沸かしてお茶を飲む?
(ムリムリムリ! とてもできない)
汚いとは思わないけど、なんとなく嫌だ。
(新しいヤカン、買わないとなぁ……。トイレ、いつ直るのかなぁ……)
なんだか妙に悲しくなってきた。
いつ直るかも分からない。
修理することもできない。
私が壊したわけじゃないのに、なぜこんな思いをしないといけないのか。
そんな生活を続けること2週間。
やっと業者さんが来た。
(これでトイレが使えるようになる!)
そう思った。
やっと、安心して生活ができると。
修理は思いのほか早く終わった。
そして、トイレから水が漏れていないことを確認する。
業者さんが帰ったあと、さっそくトイレを使ってみる。
レバーを回せば水が流れて……流れて……?
(あれ? 流れない?)
おかしいなと思いながら、元栓を確認する。
元栓は開いている。
開いているけど、水が流れない。
それどころか、トイレのタンクにも水が溜まらなくなっている。
(どういうこと?)
仕方がないので、またヤカンに水を入れて流す。
(もうしばらく、ヤカントイレ生活が続くのか)
そう考えたら、気分が暗くなってきた。
ジャー。
(あれ? 流れない?)
おかしい。
今朝はヤカンで流れたのに、今は全然流れない。
(なんで? もしかして……さらに壊れた?)
業者さんか修理をした。
直っていいはず。
なのに、もっと状況が悪くなった。
慌てて大家さんに連絡をする。
「業者が来て修理したけど直っていないんです。すぐに対応してください」
そう伝えた。
ところが……回答は前と同じ。
「忙しいからすぐには対応できない」と、言われた。
流石に納得がいかない。
自然に壊れたのなら、修理が来るまで待とう。
私に原因があるなら、自費での修理も考えよう。
だが今回は、あきらかに業者が悪い。
修理に来て壊していったのに、忙しいから待ては、到底納得がいかない。
あまりにふざけた対応に、頭に血が登った。
そして、大家のグダグダと続く言い訳を聞いていたら、頭の中で何かが弾けた。
「すぐって言われても困るんだよ。今日来たなら、ちゃんと直してもらわないと。まぁ、待ってもらうしかないね」
「ふざけるなー! 状況を悪化させておいて、待てとはどういうとこだ! 今すぐ直しに来るように言えー!」
大人気なく、思いっきり怒鳴ってしまった。
大家もビックリしたのだろう。
アタフタしたかと思えば、急にしおらしくなり「すぐ手配します」と、言い出した。
そして、1時間後には業者が直しに来た。
「当分無理。我慢しろ」
そう言われたのに、ちょっと怒鳴ったら1時間で直しにきたのだ。
そして無事、トイレが使えるようになった。
この件で私は2つのことを学んだ。
ひとつは、大人しいと損をする、と言うこと。
我慢して相手の言いなりになってはいけない。
言いたいことはハッキリ伝えないとダメだ。
特に、嫌なことは嫌だと言わないと、相手は自分の都合ばかりを押し付けてくる。
もうひとつ。
女子供は下に見られやすい、と言うこと。
もちろん、そんな人ばかりじゃないことは分かっている。
わかっているが……。
相手が子供だから、女だからと舐めてかかる人は多い。
その結果、損をすることもある。
だから、多少強く出ないとダメなこともある。
怒らないと駄目なときもあるだろう。
何にせよ、言いたいことはハッキリ言おうと思った。
これからも、生活して行くのだから。
〈了〉
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