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短編小説 会えなくなる前に

1本文

普段校内で使うことを許されていなかった、スマホを片手にたくさんの人たちが、写真を撮っている。

普段明るく騒いでいる一軍の男子の目にも涙がうかんでいた。 
花粉症のせいだとか強がる彼を横目に、僕も寂しさを感じざるを得なかった。

今日が彼女に会える最後の日だ。

2年間同じクラスだけど、めちゃくちゃ会話するわけじゃない
LINE持ってるけど、そんなに送ったことない。
ずっと好きだけど、なにも伝えたことない。

最後に大けがして終わってやろうそんなんことを考えていた。

我ながら自分勝手だなと思う。

口実に用意したホワイトデーのお返しを見る。
いつもより少し背伸びしたおしゃれなチョイス。慣れてなさが滲み出て少し痛々しい。

自撮りをしている女子3人組のところへ行って彼女の名前を呼んだ。緊張で声が上ずっていた。

彼女の隣にいる2人が不審そうな目で僕を見ている。
あきらかにタイミングを間違えた気がする。

「これ、少し早いけどバレンタインのお返し。ありがとね」

持っていた紙袋を手渡した。

「え!わざわざ持ってきてくれたの?ありがとう。すごい嬉しい。ちゃんとおいしかったかな?」

少し不安そうな顔をしている。

「うん。もうめちゃくちゃ美味しかったよ。世界一。」

「それは言いすぎだよ笑 でもよかった。」

彼女が一気に笑顔になる。すこし赤くなった頬が余計僕をドキドキさせる。

その笑顔が好きなんだよな。そう思ってもこれは口には出さなかった。

「あとさ。」

言わなきゃいけないと本当に思った。言え。言え。言え。

「いや…うん。元気でね。2年間ありがとう。」

言えなかった。意気地のない自分が情けなくて、なにか言いたげな彼女から、背を向けて去ってしまった。

1人寂しく学校を出る。

もう家に帰って寝よう。そう思ってこの後の約束していた友人に詫びの連絡を入れた。

イヤホンをつけて音楽を流すと、back numberの恋が流れてくる。
歌詞通りにいかなかった自分を見て、ため息をつく。

誰かが僕の背中をつついた感触がした

振り返ると彼女がいた。

驚きすぎて何も言えない僕を見て彼女が言った。

「この後2人で、私と遊びに行きませんか?」

思いもしない彼女の一言に、また驚いて、おねがいします。なんてよそよそしく言った。

彼女の顔が一気にほころんで、笑顔になる。

「その笑顔。ほんとに好きなんだ。」

まだ言いたいことがたくさんあったけど、ただそう告げていた。

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2あとがき

なんとなく書いてみたいなと思っていた小説を書いて見ました。1つ目です。

タイトルは本文の途中にも出てくるback numberの恋の歌詞の一部からとりました。好きな人がいるときやたらとこの曲は聞きたくなってしまうんですよね。

登場する男の子。あんまり気は強くないし、クラスでは2軍3軍程度なんだろうけど、こんな美少女がわざわざ追いかけて来てくれるくらいだからきっとイケメンです。許せませんね。

物語を作るのって難しいですね。どう書いてもどこかで見たような物語になってしまってる気がして、書き終わった今でもなんだかなあって少し思ってます。

ほとんど妄想ですからねこんなの。カメラロールにある、推しの写真をみながらパッと思い浮かんだことを書いて。
冷静になるとだいぶきもいですね。

僕も高校でしっかり青春したかったなあって思いますね。
余談ですが、僕の高校時代は同じ女の子に3回告白して、3回ともフラれるという酷いもんでした。今思うと寒気します。


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