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日程:2020年11月14,15日

牛島光太郎さんによる展示「かえりみちをつくる」の制作過程を体験することができるワークショップ「知らない家族のつくり話」を、三津浜にある木村邸で開催しました。

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木村邸は明治に建てられた、木造2階建ての古民家です。現在はカフェの営業や、イベントを実施するなどして活用されています。
今回は2階の部屋を使用して、ワークショップを2日間実施しました。ワークショップは、まず2階に上がって、牛島さんの過去作品を鑑賞するところから始まりました。

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※牛島さんの過去作品をワークショップの最初に見ました。

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作品を観終わると、牛島さんからのお話しが始まりました。「かえりみちをつくる」の展示を進めるにあたって、三津浜を歩き回ったことや、メイン会場である三津浜アート蔵にたどり着き、蔵のオーナーさんのご家族から蔵にまつわる様々なお話しを聞いたことなど教えてくれました。このとき、ご家族から聞いた蔵の歴史が、オーナーさんのご家族の歴史でもあると牛島さんは感じたそうです。そこで、展示のテーマを「家族」にしようと牛島さんは思い立ち、オーナーさんのご家族から聞いた話に、牛島さんの考えた想像の物語も加えて、展示を構成しました。
この制作のプロセスをワークショップでは体験してもらうことにしました。

①【話し・聞きあう】
知らない人同士がペアになって、家族にまつわる思い出を小さな声で話し合う。
筒を使用してお話しをしました。

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②【相手の思い出を文字にする】
相手から聞いた家族の思い出を文章にしてみます。一言一句聞いたことをそのまま書かなくてはならないわけではなく、こんなことを言っていたなという、覚えていることを書きます。

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③【誰かの思い出の文章を絵にする】
文章を書き終えたら皆さんの文章を集めて、その文章をシャッフルします。誰の思い出の話なのか名前も書いていないのでわかりません。このワークショップの参加者の誰かの思い出ということだけしかわからない状態です。文章からその様子を想像してみて、絵を描いてみます。

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④【鑑賞する】
描き終えた絵と文章を参加者皆さんで一緒に見てみます。自分が話した思い出が他の人によってどのように描かれるのかとても気になります。

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⑤【文章を細かくカットする】
参加者の皆さんが書いた、相手の家族の思い出の文章を1フレーズごとにカットしていきます。

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⑥【架空の家族の話を考える】
切り取られた家族の思い出のフレーズを2枚選んで、そのフレーズから新たに文章を考えて、架空の家族の話を作っていきます。お話しを色のついた画用紙に貼ったり、新たに紙に書いたりして作り上げます。2枚だけでは足りない場合、他のフレーズも選んで組み合わせることもできます。また、描いた絵もシェアをして、切り取ったりして貼ることで文章を補うことも可能です。どんな家族のつくり話が生まれるのでしょうか。

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⑦【つくり話を朗読する】
完成したつくり話を皆でシェアします。ペアになった参加者のどちらかに、つくり話を朗読してもらいました。朗読する前に、選んだフレーズを言ってもらい、そこから朗読を始めました。例えば「ものすごい大げんかでセロハンテープの重い台が飛んでくることもあったそうです。」の一文と「しばらくシュークリームカスタードなど好きになれなかったのを記憶しています」の一文をそれぞれ使って、広島に住んでいた祖父の話を作り上げた方がいました。また、「2週間に1回くらい焼肉をする家族だったのですが、お店では1度も焼肉を食べたことがありませんでした。」の一文と「40年ほど前に撮った1枚の写真についての思い出でした。」の一文を使って、大人数の家族のお話しを作った方もいました。

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ワークショップの最初にペアになって筒を通じて小声で聞いた家族の思い出が、いくつかの過程を経て、全く違う形の家族のつくり話に変化していきました。参加者は、牛島さんが「かえりみちをつくる」を創作する際に、ある当事者についてのお話を別の誰かを通じて聞き、牛島さんの解釈で再構築するという手法を追体験することができました。普段はあまり触れることがない、美術家の創作の過程を体験する貴重なワークショップとなりました。

参加者のアンケートには「自分の力で物語を作ることはあっても、他人のアイディアや予想外の文が来たときに、これまでになかったような考えやイメージが浮かび、発想力、想像力が豊かになりました。」や、「人の思い出や関係性を疑似体験できたようで楽しかった。言葉・文章を自由な状態で考えることが最近とても少なく、自分の言葉を少しとり戻せたように感じた。」などの意見がありました。
このワークショップで体験した「現実を少しだけ曲げて考えてみる」というのは、普段の生活に取り入れることで、これまでとは異なる豊かな視点を持つことができるのかもしれないと思いました。

絵:しょうたろう
撮影:元屋地伸広、松宮俊文(松山ブンカ・ラボ ※2枚目の牛島さん過去作品写真のみ) 
文章:松宮俊文(松山ブンカ・ラボ)



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