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CIRCULAR DESIGN CHALLENGE ファイナリスト ソ シゲサカイ

サーキュラーファッションのためのインド最大のコンテスト「CIRCULAR DESIGN CHALLENGE」のファイナリストに選出されたのは、文化服装学院ファッション高度専門士科を2024年3月に卒業した、香港出身のソ シゲサカイさん。サステナブルファッションの実践と、プラットフォーム立ち上げの展望について語ってくれました。

ーまず、このコンテストは基本的にインド国内のデザイナーを対象にしていて、海外からの応募はコンテストのグローバルパートナーからの推薦が必要になります。シゲさんはそのひとつである香港のリドレスデザインアワード2016年のファイナリストで、今回はそこからの案内があり、応募に至ったとのこと。

リドレスの過去のファイナリストたちは、新しい素材の開発や廃棄された素材の再利用などサステナブルファッションを実践している人が多いです。インドは埋め立て廃棄物を減らしたいという喫緊の課題もありますから、インドで一番大きなサーキュラーデザインのコンテストということもあり、推薦が必要なんだと思います。

2022年12月に開催した国際交流センター主催のグローバルセミナーに登壇

ー応募したのはいつ頃ですか?

2024年4月頃です。卒業コレクション7体と一緒に、新しいコレクション4体のデザイン画と素材を提出しました。

卒業コレクション「I LIVE, I DIE, I LIVE AGAIN」

これはビジネスレベルのコンテストなので、個人というよりもブランドを運営している前提。最初は既にあるコレクションを説明する。でも、ファイナリストになったら未発表のコレクションが必要です。

応募書類もエクセルいっぱいに、コンセプトや、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)で何を実践しているか、どんな素材を使っているか、生分解性か、生産背景について……。そんなことを書かなければいけませんでした。

ーコレクションのコンセプトを教えてください。

コンセプトは廃棄された素材を再利用すること。素材の可能性を探究しています。古着の着物、救命胴衣、エアバッグ、アルミシート、パラシュート、エコファー、パイナップルの繊維、アップルレザーなど企業様に提供いただいたものを使用しました。いろいろなカラーと素材、でも、同じシルエット。パターンカッティングや柄合わせを実験して、試しています。

CIRCULAR DESIGN CHALLENGEのために制作した6体

私は人をつなげる服を作りたいんです。例えば、素材の会社と私、素材と人。廃棄された素材を使ったら、もう一度その素材に注目してもらえる。

ーセミファイナリストの発表が6月でしたね。インド、ヨーロッパ、イギリス、アジア太平洋、それぞれ46名が選ばれていました。各地域で予選インタビューがあったようですね。

ちょうどロンドンで開催されるGraduate Fashion Weekに文化服装学院の代表として参加するために飛行機に乗っていて、着陸した時にセミファイナル選出のメールを受け取りました。オンラインインタビューもロンドンにいる間に行われたのですが、私は新しいサンプルが必要なんだと誤解をしてしまって、イベントの合間に現地の生地屋さんを周って、泊めてもらっていたパタンナーの友達の家で制作をしていました。

Graduate Fashion Weekで発表した卒業コレクション

インタビュー自体は3分程度。英語です。自分のコレクションのコンセプト、なぜこのコンテストに挑戦したいのか、これから何をやりたいか、などを聞かれました。結果もその日に伝えられ、日本に帰国してから本格的に新しいコレクションの制作に取り掛かりました。

友人がオランダから持ってきてくれたパラシュート生地
制作過程

ー同時期に、世界中のデザイン系の学生や卒業生のためのプラットフォームArts Threadで開催されていた「Global Creative Graduate Showcase」のファイナリストにもなっていました。これは卒業制作のポートフォリオをオンラインに登録するものですね。

自分が信じられるものを作って、色々なプラットフォームに応募するのは、色々な視点で評価して欲しいから。入選するしないには、運もあります。

ポートフォリオページ(画像クリックでウェブサイトへ)

ーインドでの最終審査会は?

10日間ほどインドに滞在しました。渡航費、宿泊費、食事、全部主催者が出してくれました。フィッティングやプレゼンテーション、ドキュメンタリーの撮影など滞在中の予定はほぼ決まっているので自由時間はほとんどありませんが、ファッションウィーク中だったので、ショーを見たり、インドのデザイナーさんのスタジオ見学などもしました。

フィッティング
着装モデル2名とプレゼンテーション
審査員は5名

最終のプレゼンテーションはインド国連の建物で行われました。ファイナリストはインドから4名、ヨーロッパ、イギリス、アジア太平洋から各1名の合計7名。審査員はデザイナーではなくて、インド国連の方や、サラ・マイノさん(元VOGUE ITALIA)など、クリエイティビティというよりもビジネス目線の審査でした。私はまだブランドビジネスをしているわけではないので、「これからですね」というフィードバック。他のファイナリストはみんな工場や会社を持っているし、ビジネスをしている人たちでした。とてもいい経験で、現地のデザイナーや工場とのネットワークができました。

審査員とファイナリストたちと

ー審査会以外で印象的な出来事はありましたか?

私のコレクションはメンズのドレスだったので、賛否両論が巻き起こりました。それで話題になったので、現地のインフルエンサーさんや色々な方に声をかけられたりしましたが、私は特にLGBTQについて何か主張したいわけではなく、自分のコンセプトを表現したかっただけ。

Lakme Fashion Weekで作品を発表

ー日本で発表した時は?

日本はショーではなく展示だったので、そこまでの反応はありませんでした。それよりもマネキンに被せた自分の顔のマスクのほうが話題になりましたね(笑)。

Instagram責任者Adam Mosseri(アダム・モッセーリ)氏が展示を見学に
展示風景

ーサステナブルに興味を持ったのはいつから?

リドレスに応募した2015年から。当時はあまりSDGsのことが広まっていなかったのもありますが、自分自身もサプライチェーンのことをそこまで理解できていなかったので、デッドストックの生地を使って作っただけでした。

私は社会福祉士としてのバックグラウンドがあるので、社会的に意味のある服を作りたいという思いがずっとあります。

ーファッションに興味を持ったのは?

中学生の頃。ファッションが好きな友達ができたことがきっかけです。みんなと同じことはやりたくない、スペシャルになりたいという気持ちかな。社会福祉士として仕事をしていた時も、今と同じで髪も長かったですし、日本のファッションも好きでした。

ー大学で社会福祉士の勉強をしたあと、香港理工大学で2年間ファッションを学んだそうですが、文化服装学院の4年間はどうでしたか?

香港でファッションを学んでいた頃は、ファッション業界の人たちや学生と知り合いになりたくて、コンテストにたくさん参加していたので、縫製は全然できなかったんです。ヨウジに憧れがあったし、文化は有名だったので、アパレルのことをもっと勉強したくて留学しました。

文化での4年間で技術も学べましたし、友達がたくさんできました。両方とも目標でもあったので。4年生は自由にやらせてもらえて一番楽しかった。

ー今後やりたいことを教えてください。

ブランドだけではなく、サステナブルファッションのプラットフォームを作りたいと思っています。教育機関と連携した啓蒙活動や、廃棄率を下げるためのコンサルなどもやっていければと考えています。

CIRCULAR DESIGN CHALLENGE
パートナー:R|Elan、国連インド、Lakme Fashion Week
開催地:インド
応募資格:インド国民または、グローバルパートナーの推薦者
応募作品:6体
提出作品:実物作品
賞:大賞150万ルピー(約260万円)

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