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HEMPEL AWARD 2024 優秀賞 中野恭佑
クリエイティブなファッションを媒体として、伝統的な職人技、民族的な美学、現代的なデザインを探求した「第32回中国国際ヤングファッションデザイナーコンテスト(ヘンペルアワード)」。2024年11月に中国・杭州で行われた最終審査会で優秀賞を受賞した、文化服装学院アパレルデザイン科メンズデザインコースの中野恭佑さんからお話を聞きました。
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ー今回の作品は2年生の修了制作がもとになっているとのことですが、このコンテストに応募しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
応募したきっかけは2つあって、2年生の担任の先生に背中を押してもらったことと、1年生の時に寮でお世話になった先輩が受賞したことでコンテストの存在を知っていたからです。
ー作品のテーマとコンセプトは?
修了制作のときは「Passion(情熱)」というタイトルにしていました。今回は「Connection(つながり)」。コンテストの今年のテーマが「Reminiscence and Inheritance(追憶と継承)」だったので、それを見て、このテーマにしました。
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コンセプトは「過去と今をつなぐ心の支え」です。それは、幼少期に夢中になった少年漫画のこと。僕にとって、ただの娯楽にとどまらず、生きる目標になったり、自分自身の成長や、人生に影響を与えてくれました。特にそこに描かれる主人公、ヒーローたちの勇気や友情、自己犠牲の精神に今も勇気をもらっています。
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現代社会では、SNSを通じて多くの情報が過剰に流れ込みます。その結果、自分と他人を比べてしまい、プレッシャーや不安を抱えることも少なくありません。そんな中で、少年漫画の主人公たちが教えてくれたのは、他人と競うのではなく、昨日の自分を超えることの大切さでした。
デザインは、強さと情熱を象徴する赤と黒を使って、ヒーローたちのエネルギーを、そして、柔らかく破れやすいビニール素材を生地に重ねることで、少年の繊細な心のはかなさや壊れやすさを表現しました。
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この作品を通して、多くの人々に、幼少の頃に好きだったものが、大人になった自分にも大きな影響を与えているということを感じてほしいと思っています。
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ースケジュール感についてもお聞きしたいです。7月初旬にファイナリスト選出の連絡があって、11月初旬に最終審査会。修了制作の2体はすでにあったとのことだったので、約4ヵ月で残りの1体を制作ということですか?
修了制作の2体はトップスだけだったので、3体目のトップス、インナーが2着、アームウォーマーやバッグなどのニットアイテムが5つ、タイツが3足、パンツ1着、スカート2枚。追加で14アイテムを制作しました。
ーすごく余裕、というわけでもなかったんですね。
制作と並行して就活もあったので意外と時間がありませんでした。他のファイナリストは工場に出している人が多かったので、自分で作っていると言うと驚かれました。ニットだけは知り合いにお願いして編んでもらいましたが。
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ーこだわった部分はありますか?
コーディネートを意識しました。一番いいのは作品100%、ポートフォリオ100%だと思います。でも今回は残っている時間を100%作品に充てたかったんです。結局、見られるものは作品ですし、作品を優先しないと、たとえポートフォリオがよくても作品が中途半端になるのが嫌だったので、作品に関して後悔はないですね。
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ー作品制作以外の準備も大変だったと思います。渡航するために有明の中国ビザセンターに行って長時間待ったり。
海外へ行くこと自体が初めてで、中国に着いたのは深夜23時半頃でした。緊張もあって少し不安でしたし、入国カードを書く場所で借りられるボールペンのインクがすべて切れていて焦りました。日本語が通じず、何を書けばいいか分からず戸惑う中、係の人が代わりに書いてくれたのがありがたかったです。空港へは、コンテストの通訳の方が迎えに来てくれました。
ー最終審査会のプレゼンテーションは3分くらいとなっていましたが、審査員から質問もされましたか?
1体の作品について「付属品はボタンの取り外しで他のシルエットに変えることが出来るの?」と聞かれたりしました。僕は今回用意しませんでしたが、ポートフォリオのような、プレゼン中に審査員の手元で見てもらえるものを用意した方がいいかもしれません。
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リハーサルの時など待ち時間が長かったので、他のファイナリストたちに作品について尋ねたりしていました。中国だけでなく、ノルウェーやイタリア、アメリカ、インドネシアの人もいて、国によってデザインの感じが違う印象を受けました。 文化にいる中国の留学生はみんな日本語が話せるので、ここでも言葉が通じそうな感じがして、あまり外国に行った感じはありませんでした。
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ー発表ショーはどうでしたか? 昨年の南宋徳寿宮遺跡博物館とは正反対の、モダンな会場でしたね。
ショー会場の床にカーペットが敷いてあって、中央にプールみたいなのもあって、ドローンも飛んでいたのがすごく印象的でした。
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ーどうして文化服装学院に?
地元は福岡で、高校選びから何も考えずに公立だったらどこでも良いと思い、兄と同じ高校に通ったのですが、3年間で特にやりたいことが見つからず、1年間宅浪していました。勉強の合間に服を見たりしているうちに、自分は服が好きなんだと気づいたんです。特にコレクションに詳しいわけではなかったのですが、本格的に学ぶなら一番有名な学校がいいと考えて調べ、文化服装学院を見つけました。
また、僕はコロナの期間中、オンライン授業に限界を感じて2年間休学していて、復学したときは気持ちが沈んでいたんです。1年生で頑張って学んだこともほとんど忘れてしまっているし、リハビリみたいに過ごしていて。そのときの、もがいている、何でもいいから行動したいという気持ちからこの作品が出来ました。
ーいまは3年生なので、これから卒業制作ですか?
メンズコースとしての課題をやれていないので、これからやります。でも、燃え尽き症候群というか、みんなどうしてるんですかね、コンテスト終わった後。コンテストの前に、コンテスト後の予定をある程度立てていたのですが、ずっと上の空という感じでした。
コンテストやってみたら、他の人よりやる事が増えて辛い時期もありましたが、終わった後は良い思い出になりました。みんなモチベーションが高くて、そこに居られることが自分にとってプラスになりました。なんでもいいから変わりたいと思ったらコンテストに挑戦することをおすすめします。また、関わっていただいた方々には感謝の気持ちを伝えたいです。
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HEMPEL AWARD China International Young Fashion Designers Contest
主催:中国ファッションデザイナー協会、ヘンペルインターナショナルグループ
開始年:1993年
開催地:中国・杭州
応募資格:35歳以下、国籍・居住地不問、チーム不可
応募作品:テーマに沿った創造的なコレクション3~5体
提出作品:着色デザイン画
賞:金賞(1 名)賞金 50,000中国元(約 100 万円)杭州と日本への往復航空券、1 週間観光
銀賞(2 名)賞金 20,000中国元(約 40万円)杭州と日本への往復航空券、1 週間観光
銅賞(2 名)賞金 15,000中国元(約 30 万円)、その他賞あり