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修行時代に貰った印象的な言葉は「歌舞伎と一緒で、カウンターの内側は俺たちのステージ」【2021/12/12放送_鮨将司 オーナーシェフ 山口 将司さん】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。
12月12日の文化百貨店にお越しくださったのは、東京の青山にある鮨将司・店主の山口将司さん。今週と来週は、先日発表されたミシュランガイト2022東京で、1つ星を獲得された鮨将司にお邪魔をしてお送りします。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター 山崎晴太郎(@seiy

【今週のゲスト】
鮨将司 オーナーシェフ 山口 将司さん

1981年8月24日生まれ
東京出身
地元の鮨屋ではじまり、リッツカールトン東京などの経験を経て
ミシュラン2つ星の鮨屋プロデュースの京都フォーシーズンズホテル
の立ち上げ料理長で自身でミシュラン1つ星を獲得、その後東京に
帰り同会社のペニンシュラ東京の鮨屋の立ち上げ料理長を経験
のちに2020年6月鮨将司開業

【今週のダイジェスト】

▶︎ひと手間を加えて魚を活かす“鮨”

【山崎】コロナが落ち着いていれば、忘年会など色んな人とのお食事会という時期でしょうかね。今回は、特別な食事のど真ん中と言えそうな“お寿司”について、お聞きしていこうと思います。鮨将司・店主の山口将司さんです。

【山口】よろしくお願いします。

【山崎】3か月ほど前に利用させてもらって、その時に「ミシュランを獲るだろうな」って話をしていたら、開店からわずか1年半で見事に獲得されましたね。おめでとうございます!

【山口】ありがとうございます。嬉しい限りです。

【山崎】この評価は、1つの励みになりますよね。とは言え、星だけを目標にしているわけではないですよね?

【山口】そうですね。ただ、漠然とした目標を立てるよりは、明確な目標があった方がスタッフにも良い影響があるのかなと思っています。

【山崎】「うちの店は、星付きです」って、スタッフの方も家族や友人に話しやすかったりしますもんね。星を取ると予想した、自分の舌を褒めたいと思います(笑) 

去年の6月というコロナ禍の難しい時期にオープンをされましたが、この1年半を振り返っていかがですか?

【山口】“お客様に助けられた”1年半だったなと感じていますね。

【山崎】時期をズラそうとは考えなかったですか?

【山口】それは無かったですね。かなり前から、この時期の独立開業を決めていたので、「やるしかない!」というか他に選択肢が無かったというか……。

【山崎】すごい覚悟ですね。“おすし”には、“鮨”と“寿司”と2つの表記がありますよね。将司さんでは“鮨”を使われていますが、この漢字をどう捉えているのですか?

【山口】諸説があると思うんですけど、僕は“鮨”は魚を活かす事だと考えています。寝かしたり、ひと手間加える行為によって“鮨”になるのかなと思います。“寿司”の方は、寿の文字が使われているように、昔からのお祝いの席で使われていた“ちらし”などのイメージが強いのかなと思います。

【山崎】なるほどね。“魚が旨い”事へのこだわりを2週に渡って、教えてください。そもそも、鮨の道を目指したきっかけは何だったのですか?

【山口】趣味でサーフィンをやっていて、サーフィンをしながら世界を回りたいなと思っていて、「世界共通のものは何だろう?」と考えた時に、音楽と食だと思って食を選びました。それから、当時所属していたサーフショップの先輩の縁でカリフォルニアに行く機会があったんですけど、「ここで働きながらサーフィンをしたい」という想いが出て来て、色々話をしている中で、“すし職人はビザが取りやすい”という事を聞いて、すしを選びました。

【山崎】なるほどね。結果的にお鮨を選ばれましたが、ご自身に合っているなと感じますか?

【山口】目の前で握ったものを召し上がっていただいて、リアクションがダイレクトに分かるという所が自分には合っているのかなと思います。

【山崎】鮨職人の修業って、すごく厳しいイメージがあるんですけど……、そんな中で修業時代に貰った印象的な言葉があったりしますか?

【山口】板前になる時に言われた「カウンターの内側は歌舞伎と一緒で、俺たちのステージだから。」という言葉には、衝撃を受けました。今も、それを意識している部分は大きいですね。

【山崎】握れるだけでは、ダメだという事ですよね。修行を経て料理長になって、独立されて今に至る流れの中で、後進の指導もされてきたと思います。どうやって若手と接していますか?

【山口】その点に関しては、“見て習う”のも大事だなと。野球やサッカー、サーフィンも同じだと思うんですけど、プロになってからが重要で、自分で研究をして技術を得なければならない。その時に、見て習う事が出来るのは、“見て習うことを学んだ人”だけだと思うんですよ。

レシピが全てでは無いんですが、基準をつくってそこに対しては深く教えてあげたりして、伝えられるような部分は伝えていく。でも、口では説明できない部分など“他の人がやっている事を見て、自分のものに出来る”ような感性を磨いていきたいと思っています。

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▶︎想定外の出来事による仕込みのブレを失くすのが職人の仕事

【山崎】鮨将司は、コースで料理を提供されています。コースは食事の時間全体をプロデュースしていくと思うんですけど、どういう事に意識を置いて組み立てていますか?

【山口】うちの場合は、“つまみ”を他のお店ではやっていないような構成でお出ししています。例えば、和食の調味料の組み合わせに、ごま油を使って中華っぽい要素を加えてみるとかですね。一点して、握りは王道の江戸前寿司をお出しするというコンセプトでやっています。

最初は、料理長を任せられた時にやっていたような内容でやろうと考えていたんですけど、「他に無いような事をやっていかないとダメだ」と思いまして。遊び心というか、ちょっとした変化を出せるのは、つまみの所かなという事で、こういう構成になりました。

【山崎】フレンチやイタリアンだと、スープや前菜があってメインとデザートというように、ある程度の型の中でコースを構成していきますけど、それに比べてお鮨って自由な部分が多いと思うんですよ。お店によって、最初から握りばかりの所もあれば、つまみばかり先に出て来てなかなか握りにたどり着けない所もありますよね。コースの構成に、決まりみたいなものは無いんですか?

【山口】懐石料理と通じる部分はあるかもしれないです。ただ、大将のスタイルによる所が大きいので、他と比べると自由かもしれないですね。

【山崎】だからこそ、自分と相性が良い店を見つけるのも楽しかったりするんですよね。料理へは、どんなこだわりを持って仕込みや調理をされていますか?

【山口】魚に関しては、“寝かす”“脱水させる”などの、ひと手間・ひと仕事をするというのを、すごく意識しています。つまみでは、先ほど言ったような調味料の組み合わせや、フレンチなどの洋食の要素を取り入れてみたりするという事ですかね。

【山崎】実験をされている感じですか?

【山口】「こうしたら、どうかな?」という風に、常に試してはいますね。そういう試みの中で今年から始めたのが、茹でたての鱈の白子にごま油を少しだけ足したものに、仕込んだ青唐辛子の入っている自家製のネギ味噌を載せて召し上がって頂くつまみです。和食の調味料や食材なんですけど、食べてみると和食っぽくない中華のような感じになるんですね。

【山崎】そういうチャレンジ精神というか、“試す”ことがお好きなんですか?

【山口】どうですかね?(笑) ぶれずに、主軸はしっかり持ちながらですが、“他でやっていない事”は意識をしている感じです。もちろん、「美味しい」が大前提なんですけど。あとは、どこかへ食べに行った時に刺激を受けて、試してみるというのはありますね。

【山崎】握りには、どんな想いがありますか?

【山口】鮨屋なので、握りへのこだわりは強いですね。特にシャリですが―最終的にはうちでブレンドをするんですけれども―お米屋さんが粒の大きさを合わせるために、手作業でふるいにかけてくれたお米を使っています。

【山崎】手作業ってすごい手間ですよね。食感が、違ってくるんですか?

【山口】全然、違いますね。問屋さんに回していただいたそのお米を、自分が今まで培ってきた知識・技術を駆使して炊いてから、シャリにしています。

【山崎】なるほどね。これぞ、“こだわり”という感じですね。季節や気候によって、仕入れたものの調理の仕方も変えていくんですよね?

【山口】そうですね。「これくらい寝かせたら、こんな状態になっているかな?」と想定をして、魚を寝かせたりするんですけど、いざそのタイミングで見てみると想像と違う事もあります。自分の想像と違う事が起きたりするのですが、そのブレを失くすのが職人の仕事なので、常に状況や上手くいかなかった原因を考えて仕込みをしています。

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▶︎時代に合わせて美味しいものを楽しく食事できることに注力していきたい

【山崎】お話を聞いていると、感覚を磨き続ける必要があるというか、ズレたら終わりなところもありますよね。日常的に意識をされていることはありますか?

【山口】最近は、休みの日以外はコーヒーを飲むのを辞めたりしていますね。

【山崎】それは味覚の問題ですか?

【山口】「何か努力しなきゃいけない」ではないですけど、気持ちの部分も大きいですかね。アスリートと同じように、自分に枷みたいなものはしている感じですね。

【山崎】器や盛り付けと、食には芸術的な所がありますよね。その感覚も磨く必要がありますよね?

【山口】修行時代から、「美術館に行け」とか「ファッションの色使いを気にして見ろ」とは言われてきましたね。その影響もあると思うんですけど、料理の雑誌やレストラン誌は未だに目を通して、トレンドは確認しています。

【山崎】今日、お話を聞きながら、「寿司職人って完成があるのかな?」と思ったんですけど、「俺は完成した!」と山口さんが思う瞬間って、いつ来ると思います?

【山口】完成は、無いんですかね……。「今より良いものを」ではないですけど、美味しいと思って頂けるものを作っていくという事を考えています。昔は、そんな事を考えていなかった気もするんですけど、最近は特にそう思っています。

【山崎】コロナ禍という事もあって、お客さんのライフスタイルや好みも変わってくる中で、サバイブの仕方はどう考えていますか?

【山口】“「美味しい」と思うものを、楽しく食事をしていただくこと”にフォーカスしているというか、そこを軸にしています。パフォーマンスとかを考える時もあるんですけど、過度には変わらずという感じですね。例えば、自動車メーカーやハイブランドも、普遍的にずっと変わらずあるじゃないですか?

【山崎】そうですね。

【山口】“物事の真髄”とまで言ったら、大げさかもしれないんですけど、そういう事なのかなと思っています。なので、シンプルに「美味しい」「これが良い」というものを追及するだけ、とでも言うんですかね。仕込みのやり方なんかには、違いが出てくるかもしれませんが、“江戸前寿司”という握りは変わらないように、ブレずにやって行きたいなと思っています。

【山崎】相対軸ではなく、絶対軸の中で、成長していくということですかね。ありがとうございます。本日のゲストは、鮨将司・店主の山口将司さんでした。


【今週のプレイリスト】

▶︎山口 将司さんのリクエスト
『California Love』2Pac

▶︎山崎 晴太郎のセレクト
『Sanctuary』Grobert


といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週は、鮨将司の店内やサービスへのこだわりをお伺いしていきます。

【次回12/19(日)24:30-25:00ゲスト】
鮨将司 オーナーシェフ 山口 将司さん

また日曜深夜にお会いしましょう!

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