文果組インターン生による北先生インタビュー第3弾
文果組インターン生で「本多静六 若者よ、人生に投資せよ」(実業之日本社)の著者、「永遠の森」脚本を書かれている北康利先生にインタビューをさせていただきました。
Q. もう少し本多静六博士についてお聞きしたいんですけども、北先生の中で一番気に入られている格言はありますか?
本多静六博士の格言はそれだけで一冊本になるくらいですが、そのたくさん残された言葉の中で一番っていう意味では、この本のあとがきの一番最後に掲げた言葉なんでしょうね。〈いつの世にも、根本的な重大問題は山積している。個人の力ではどうにもならぬ難関が立ちはだかっている。しかしながら、各人各個の心掛け次第で、それも順次に取り崩していけぬものでもない。「心掛ける」といった小さな力も、一人の心掛けが十人の心掛けになり、十人の心掛けが百人の心掛けになれば、やがては、千人、万人の大きな力ともなる。百万人の心掛けは百万人の力であり、千万人の心掛けは千万人の力である。いかにままならぬ世の中と申しても、百万人の力、千万人の力で、これを少しでもままなるほうへもっていけぬということはあるまい。必ずもっていける。必ずより(、、)よき(、、)変化は期待し得られる。私はさよう信じてうたがわない〉(『私の生活流儀』)僕の座右の銘が先ほども触れた「一燈照隅 萬燈遍照」です。最澄さんの「一隅を照らす これ国の宝なり」という言葉を安岡正篤さんがアレンジされたものです。一人が社会の片隅を照らせば、それがたくさん集まって世の中全体が明るくなるという意味ですね。本多博士の言葉もまさにそういう意味だと思います。僕はこれからも、この「一燈照隅」をやっていきたい。自分自身の強みである日本史の知識とビジネスマインドと文章を書く力、それを最大限発揮しながら、1年に1冊でも評伝を書き続けていきたい。みなさんも自分の強みを見つけ、それを道楽化し、世の中の一隅でもいいから照らしていけば、世の中はきっと良くなっていくと思います。
僕は本多静六のひとつ前に出した渋沢栄一の評伝のタイトルに「乃公出でずんば」という言葉を選びました。これは、俺がやらねば誰がやるっていう心意気を示す言葉なんです。世の中には、発言すること、行動することはリスクだと思って評論家の立場で世の中を傍観している人が多い。確かに社会的地位の高い人であればあるほど、発言や行動には慎重にならねば、下手なことを言ったりしたりすると容易にその地位は失われます。しかし、それでいいんでしょうか?白洲次郎はえらくなったら「役得を考えるんじゃなく、役損を考えるんだ」と言いました。本多静六博士は東京帝国大学名誉博士でありながら、『私の財産告白』などの啓蒙書をどんどん世に送っていった。学者仲間からは相当後ろ指を指されたようですが、戦争に負けて悄然としている国民に、もう一度立ち上がる灯をともしてみせたのです。僕はこの本多静六の「乃公出でずんば」の精神が大好きです。心から尊敬できる人物だと思います。