光ちゃんと平和を語る。
隣町に厚木基地、座間キャンプと米軍基地がある。終戦後直ぐにコーンパイプを咥えたマッカーサーが来日した厚木基地だが、厚木市から遥か遠い綾瀬市にある。いい加減なものだ。いい加減と言えば、マッカーサーの被っていた帽子は、フィリピン軍のものだったそうだ。
一方の座間キャンプを説明しよう。
Wikipediaによると、『キャンプ座間は、在日アメリカ陸軍司令部米軍外部での通称「リトルペンタゴン」、内部では建物番号から取った通称「101(ワン・オー・ワン)」が置かれている。』
「結構に最前線基地の一つだ。戦争が起これば、この辺は、ミサイルの直撃を受けるよ。」と山下光輝が博学のところを見せた。
山下は、相澤義治とは、高校時代の同級生だ。最初に山下と会った時、気が合うとは思っても見なかった。ある時、パックインミュージックの話になった。木曜日深夜の野沢那智、白石冬美がパーソナリティを務めている番組が好きだった。
「なっちゃんとチャコちゃんのパック・イン・ミュージック、めちゃくちゃ、面白い」とクラスの端の方から聞こえた。
山下の声だ。相澤は、まさか、ガリ勉の山下が聞いているとはと不思議がっていた。生徒会長に立候補した優等生の代表のような男は、「ひょっこりひょうたん島」の話を演説に混ぜて当選した。そっちの方の人種と思っていたので、驚いた。
ある時、トイレでばったり山下と会ったので、「山下君って、なっちゃん、チャコちゃんが好きなんだ。俺も大好きだよ」と思いっきり、相澤は話しかけた。
「だって、葉書を出しているくらいで、読まれた事もあったよ。それほど好き」
「へぇ、本当のファンなんだ」
相澤が赤面するくらい詳しい、リスナーだった。それをきっかけに、2人は急接近した。
映画、テレビ、音楽など、共通点も多く、
山下の伊勢原の家まで行くほどの仲になっていた。二つ上の姉と三つ下の妹がいた。大きな養鶏場を経営する農家で、家族を見ているだけで大事に育てられてると感じた。
ただ、山下は、小児麻痺を患っていた。歩くのと喋る時に不自由な感じがするが、頭は冴え渡る秀才だった。付け加えると、異常なほど女好きだった。
映画を観に一緒に新宿まで行った。ミセスロビンソンで有名な『卒業』を観た。サイモンとガーファンクルの甘い軽快なテンポのいい曲が映画を引き立てた。ませた子どもだった。
ある時、「相模大野にワインの農園があって、シャンソン歌手が来るので行こう」と言うので、出かけて行った。ぴあ並みに情報を持っていた。
そうかと思うと、坂道の町、尾道のペンフレンドが、めちゃくちゃ理論武装をした理論家で、飽きたので、「義ちゃん、いい娘紹介する」と言われ、その理論家の武闘派の娘と、相澤が手紙のやりとりをするようになった。「光(こう)ちゃん、めちゃくちゃ、やり込められるよ、あの娘は、手に負えんよ」と山下に愚痴を言った。「そうでしょう」と相槌をうつ光ちゃんに、ちょっと勝った気がした相澤であった。それが可笑しくていられない。
社会人になって月日が流れたが、そんな山下が、突然、キャンプ座間に行こうと誘って来た。姉の子供を連れてきた。戦闘機に興味があるらしく。「義ちゃん、来週空いてる?座間キャンプに行きたいんだけど。オープンデーなんだ。甥っ子を連れて行くんだけど、一緒に行ってくれない」
と頼まれた。こう言った行事をどこで調べてくるのか、昔から探し当てる。
ゲートで、厳重な検査があった。
Clod you open your bag
と無理矢理バッグを開けさせられた。それも、小学生四年生の子供のものだ。偶然、飲みなかけのお茶のペットボトルがあった。
「ここで捨てるか、飲み干せ」と高圧な命令が返って来た。仕方ないので、軍人の目の前で、一気飲みをさせた。「日本男子ココにありの精神だね。」
戦闘機、一機とヘリコプター、一機が展示れてあった。戦車や装甲車など陸軍の主要車種も並べられていた。そうこうしているうちに、時間が過ぎ、ハンバガーと飲み物を買って、ベンチで飲食した。駐留家族のハウスも見れたが、ハウスの前を通り過ぎて、ゲートに戻った。
「米軍に助けられているのか、どうかは、分からないけれど、いないよりいた方がいいに決まっている。ここが火の海に成らなければいいのだが」と相澤は、ゲートを越えて、ホッとして、本音を語った。
平和な生活って何だろう。戦争をしない事だ。決まりきった答えしか、出てこないが、この穏やかな日々が続きますようにと願った。
日本に駐留している軍隊がいる事、戦争のための戦車や戦闘機やヘリコプターがある事。抑止力と人は言う。子どもまでもテロの一員と疑う神経質な軍人達。何かが狂ってる。お祭り騒ぎの塀の内と外の温度差を思いっきり感じた。「笑顔のあるところに平和がある。」
「平和であり続けますように」と相澤は本気だつた。もちろん、甥っ子を連れた光ちゃんもそう思った。「平和だなぁ」と。