全力フィーカ(哲ロマ)

スウェーデンにはフィーカの習慣があるのだとカーラジオが言っていた。

フィーカとは何なのか、フィーカとは、まあ、ラジオから聞いた情報を自分なりにまとめてざっくり言うと、同僚、友人、恋人、家族とコーヒーやら紅茶やらを飲んだりパンやらお菓子やらを軽く食ったりして楽しむ事らしい。
どんなに忙しい仕事中であろうが10時と15時にフィーカをするらしい。
フィーカをしないと上司が怒るぐらいフィーカは大事らしい。
そんなフィーカを大事にするスウェーデンは労働生産性がすごく高いらしい。

ふーん。とウィンカーを出し交差点で右折を待ちながらぼんやりと聞いていた。

やれんのかフィーカ

聞いていたラジオはただただフィーカの事を紹介していただけで、日本でもフィーカどうよ?みたいな提案は一切しなかった。しないのが逆にカチンと来た。やれんのかフィーカ、お前フィーカやれんのか、ほうれい線の深いフランケンみたいな顔して運転してるそこのお前、お前フィーカやれんのか。そんな挑発がひしひしと伝わってカチンと来た。

働き方改革だとか言っているし、スローライフだのも結構前からよく聞く、最近ではハロウィンだってやれている。小さい「ィ」が付く海外の習慣ならお任せあれ!日本はフィーカだってやれる筈だ。上等だよ!日本フィーカやってやんよ!
日本のフィーカはきっとすごい。きっと必死になってやると思う。必死にフィーカ。全力フィーカ。フィーカ魂。

きっとテプラー使いまくりで必死にやる。
『フィーカは必ず取る事!』『フィーカは15分まで!』『フィーカ時はフィーカバッジをつける事!』『フィーカ用品置き場』『フィー課』
フィーカの注意事項をテプラーでたくさん出してあちこち貼る。必死にフィーカやる。

コンビニも全力でフィーカを仕掛けてくる。
フィーカスペースの設置、対象商品とコーヒーを買ってフィーカ割引き、700円以上お買い上げでフィーカくじ、フィーカまん全品10円引き、フィーカ巻きご予約承り中、フィカチキ。全力で仕掛けてくる。

学生さんもフィーカ。10時からフィーカなのにちょっと小腹すいた男子が教科書を立てて授業中にこっそり早フィーカ。まだ9時半なのに早フィーカ。9時半に早フィーカして10時に本フィーカ、昼飯食って放課後15時にまたフィーカ、育ち盛りにはそれでも足りない夕飯前にまたまたフィーカ、試験勉強中の深夜フィーカ。

外回りの仕事をしている人にだってフィーカはやって来る。フィーカをして上司にフィーカ報告しないとものすごく怒られる。大変だ。
もうすぐ10時、フィーカをしなければ、どこかでフィーカをしなければ、ああ、ゆで太郎しかない、ゆで太郎でいいか、ゆで太郎の蕎麦湯でフィーカを済ませよう。
もうすぐ15時、フィーカをしなければ、どこかでフィーカをしなければ、ああ、なか卯しかない、なか卯でいいか、なか卯のなめこ汁でフィーカを済ませよう。フィーカ報告完了。セーフ。

やれんのかフィーカ

ごめんなさい俺フィーカやれない。

缶コーヒーを一口飲んでホルダーに置く。ついでにカーラジオをAMに切り替えた。

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