ヒルナンデス!(寂寥)

「片桐はいり」「蟹江敬三」「ナンチャン」「平家ガニ」のフリップを持つA。

パイプ椅子に縄で縛りつけられ座るB。後ろ手には聴覚検査で使用するスイッチのようなものを持たされている。

A「いまから順々にフリップを見ていただきます。」事務的に話すA。
B「なぜこんなことをするんだ‼痛い‼」Bに電流が走る。
A「黙って聞いてください。」
B「だから何だってこんなことを‼あ痛‼」Bに再び電流が走る。
A「いまから順々にフリップを見ていただきます。ナンチャンのフリップになったらそのスイッチのボタンを押してください。間違えると電流を流します。」Aの言葉に抑揚はない。
B「だからな、あ、痛‼」
A「おとなしく従ったほうが身のためですよ。」ナンチャンのフリップをBに見せる。
B「痛い‼」
A「ナンチャンのフリップになったらボタンを押してくださいと言ったでしょう。」
B「わ、わかった。」
A「ではいきますよ。これは?」片桐はいりのフリップをBに見せるA。
A「これは?」蟹江敬三のフリップ。
A「これは?」ナンチャンのフリップ。(ボタンを押すB)
A「そうです。その調子ですよ。」
A「これは?」平家ガニのフリップ。
A「これは?」蟹江敬三のフリップ。
A「これは?」ナンチャンのフリップ。(ボタンを押すB)
A「これは?」ナンチャンのフリップ。(ボタンを押すB)
A「これは?」ナンチャンのフリップ。(ボタンを押すB)
A「これは?」平家ガニのフリップ。(ボタンを押すB)
B「痛っ‼」
A「ダメですよ、集中してください。」
―片桐はいり
―片桐はいり
―蟹江敬三
―蟹江敬三
―片桐はいり
―蟹江敬三
―片桐はいり
―平家ガニ(ボタンを押すB)
B「痛っ‼」
―ナンチャン(ボタンを押すB)
―ナンチャン(ボタンを押すB)
―蟹江敬三
―片桐はいり
―片桐はいり
―蟹江敬三
―蟹江敬三
―平家ガニ
―平家ガニ
―平家ガニ(ボタンを押すB)
B「痛‼」

暗転する舞台。

再び照明が点くと、そこにはひどく疲れ切ったB。
B「…なんだってこんなことを俺に?痛い‼」
A「続けますよ。これは?」
B「痛っ‼」
A「これは?」
B「痛っ‼」
A「これは?」
B「痛っ‼」
A「これは?」
B「痛っ‼」
―Aの持つフリップにはもうナンチャンはなく、片桐はいりはホームベースに、蟹江敬三は蟹江一平に、平家ガニは草彅剛に替わっていた。
A「これは?」
B「痛っ‼」
A「これは?」
B「痛っ‼」
A「これは?」
B「痛っ‼」
A「これは?」
いつ終えるともしれないやりとり。たまらずBが聞く。
B「いま何時くらいなんだ?」
A「昼くらいじゃね。」
B「痛っ‼」

―暗転。(おわり)

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