書き出し自選・ぴすとるの5作品(ぴすとる)
安心して下さい
履いてますよ
(全裸で頭に乗せたハイヒールを指差して)
どーも、書き出し作家のぴすとるです。
獄中から失礼いたします。
(深く長いおじぎ)
僭越ながら今回書き出し自選を書かせていただきました。読んでいただき光栄です。
(おじぎでぶち撒けた空き缶をランドセルに戻す)
実は以前、他の作家さんからもお願いされていたのですが、みなさんの自選集がどれも素敵で「こんなの俺には絶対書けない!紙の鍵盤じゃ指が沈まない!」と逃げてました。
しかし今回文芸ヌーの中の人「ヌーちゃん」から急に「ひとは ねてるときにくもをたべてるらしいよ」とDMをいただき、怖くなって筆を執った次第です。
怖いと言えば、先日テレビゲームをやってた嫁が、倒れて動かなくなったゾンビの頭にとどめを1発ずつ撃ち込んでいるのを見てしまいました。怖いものだらけです。
さて私の書き出し小説歴ですが、初採用が2014年なので、もう9年間も続けてるんですね!自分でもびっくりです。(びっくりして飛び上がるベレー帽)
前置きとバカ話はこれくらいにして採用作品80本の中から自選したぴすとるの書き出し小説をご覧ください!!
別れがつらくならないように、育てた豚はすべて「吉田」と呼んだ。
(第61回 規定部門「吉田」)
命の授業というものがあります。
クラスで育てた豚を最後に全員で食べるってやつですね。色んな意見があると思いますが、毎日笑顔でご飯食べさせてくれて「僕もクラスメイトの一員だブー♪」って思ってたらある日突然屠殺されるの怖すぎですよね。俺が豚だったら「テメーら死んだら1人残らず畜生界に引きずり込んでやる!!」とブチ切れます。
やっぱり育てた豚は「吉田」と呼びましょう。
この音の鳴る靴の28㎝をください。
(第99回 規定部門「バカ」)
「ザッ」と靴屋店員の後退る音が聞こえます。
恐怖を感じているのでしょう。
そんな時は「えへっ!えへへへっ!」と笑い、店員さんの「28㎝..ですか?」に「うん!!」と元気よく返事をしましょう。
きっとバカだと理解して安心してくれるでしょう。
ちなみに私の靴のサイズも28㎝ですが音は鳴りません(光ります)。
文庫本を落とし、中の活字を床にぶち撒けた。
(第126回 自由部門)
床にぶち撒けて絶望的な気持ちになる時があります。この前爪楊枝をぶち撒けた時は(嫁に見つかる前に)元のケースに戻すのが大変でした。
もし文庫本を落として活字が床一面に散らばったらどうでしょう。元に戻すのは無理そうですね。広辞苑なんか落とした日にゃ最悪です。
あと皆さんは床にぶち撒けた爪楊枝は戻さずに捨てましょう。
ボブと言い争う相手に祖母は「ファックさんも落ち着いて!」と何度も諌めた。
(第149回 規定部門「ボブ」)
アメリカ人がケンカしています。
口の悪いボブは何度も「ファック!」を連発していたのでしょう。
そこに仲裁に入ったボブの祖母(日本人)が、
相手の名前をファックさんと勘違いして、ボブと一緒に「ファック!」と連呼してしまいます。
懇願して諌めるような表情のおばあちゃんにファックと言われたら困惑しちゃいますよね。
もしかするとこの日からずっと「ファックさん」って呼び続けているかもしれません。
銃で囲まれた店長は両手のイカを床に置き、手を頭の後ろで組んだ。
(第270回 規定部門「イカ」)
子供の頃のヒーローにジャッキー・チェンがいます。
ジャッキーが椅子や自転車など身の回りの物を使って戦うのがとてもワクワクしました。
もしそれがスーパーの店長ならどうでしょう。
鮮魚コーナーに追い詰められてもきっとイカで何人もの敵を倒しまくると思います。
ちなみに私が5歳頃、母にイカを買って来てとおつかいを頼まれたのですが、イカの目が怖くて買わずに帰り、ひきつった顔で「ナカッタ」と言ったの思い出しました。しょげないでよベイべー
いかがでしたでしょうか?
こんなの読まずに壊れたテレビ(©️徳永英明)を眺めていたほうがよっぽど良かったって?
何はともあれここまでお付き合いいただきありがとうございました。
またどこか塀の外でお会いしましょう。
それでは私は鉄格子に味噌汁をかけ錆びらせる作業に戻ります。
〈おわり〉