飛訳〜第1回”I LOVE YOU.“(suzukishika)

夏目漱石が"I love you"を「月が綺麗ですね」と訳したように。
あるいは、戸田奈津子のアクロバティックな字幕のように。
「飛訳」とは、簡単な英文をいかにジャンプして訳せるか、それだけにフォーカスして楽しもうじゃないかという新しい文芸形式である。第1回のお題は

"I love you."

初回にしていきなり漱石超えを狙った意欲作たちをご覧ください。


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I love you.
灰汁が浮いてますね。

(Yves Saint Lauにゃん)

I love you.
鬼が怖いですね。

(ぴすとる)

I love you.
保冷剤3つ入れておきますね

(流し目髑髏)

I love you.
個性的な髪形ですね。

(トミ子)

I love you.
まつ毛、長いですね。

(トミ子)

I love you.
僕がうつしたと思う。

(おかめ)

I love you.
ダメに決まっているでしょう。

(井沢)

I love you.
逮捕だ。

(天久聖一)

I love you.
鶯谷で下車した時みたいにかい。

(ボーフラ)

I love you.
逆に和室がいいって!

(TOKUNAGA)

I love you.
君が歌うスピッツをもう一度聞きたい。

(もんぜん)

I love you.
裏起毛?

(ヘリコプター)

I love you.
小ライス無料です。

(哲ロマ)

I love you.
専門医にご相談ください。

(xissa)

I love you.
ビール以外の人いる?

(大伴)

I love you.
松居棒使う?

(茂具田)

I love you.
レジ、通そ?

(TOKUNAGA)

I love you.
ロン。

(正夢の3人目)

I love you.
おなかすいたね。

(xissa)

I love you.
拇印で大丈夫です。

(おかめ)

I love you.
川の様子を見てきます

(紀野珍)

I love you.
おかゆ

(哲ロマ)

I love you.
俺が剥くよ。

(天久聖一)

I love you.
います。

(義ん母)

I love you.
せやな。

(おかめ)


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25の飛訳、いかがだったろうか。世界が実に様々な"I love you."にあふれていることを再確認できたのではないかと思う。"love"とはいったい何なのかというあまりにも根源的な問いについて考えることは、どうやら"I"と"you"をとらえ直すところから始まるようだ。そういえば、"you"は単数も複数もいける単語であった。

飛訳の要諦は原文との距離感にある。訳文それ自体の味わいもさることながら、原文とどのように寄り添っているのか、そこんところが読者の想像をかき立てる。逆に、書き手は原文があるからこそ力強く地面を蹴って、自由に飛べる。そのことをあらためて実感した第1回だった。

ちなみに漱石の「月が綺麗ですね」エピソードは特に根拠がなく、後世の創作だという説もあるようだ。しかしまあ、ここではどっちでもいいだろう。素敵だから。

担当はsuzukishikaでした。


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