書き出し自選・八重樫の5作品(八重樫)
八重樫です。本名です。
さくさくさんからご指名いただき、今回の書き出し自選を担当いたします。
歴代の担当者の中で最も「常連」と呼ぶには微妙な人間ですが、自分なりにお気に入りの5作品を選んでみました。
よろしくお願いします。
その選挙カーは海を目指しているように見えた。
(第103回 規定部門・選挙)
初採用作です。それだけでも嬉しいのに、天久さんから「なんだろうこの意味のない片岡義男感は。」とのコメントまでいただけて天にも昇る心地でした。
正直なところ片岡義男を読んだことがなく、あまりピンとは来ていなかったにも関わらず天に昇りかけましたので、もしもピンと来ていたら完全な昇天を遂げていた可能性も否定できません。
デビュー作がそのまま遺作になるのを回避できたのは、ひとえに片岡義男のおかげです。ありがとう義男。誰なんだ。
巻きグソをほどいて、北風は止んだ。
(第138回 規定部門・うんこ)
規定部門のお題が「うんこ」だと発表された瞬間から「次回は絶対に採用されるぞ〜!!」と並々ならぬ意気込みでひたすら脳内のうんこをこねくり回し続ける二週間を過ごしました。
表記を「巻き糞」と「巻きグソ」のどちらにするかで悩みに悩み、漢字だとなんだか硬すぎてほどけないような気がするな、ということでカタカナの「巻きグソ」に落ち着きました。無事にほどけてよかったです。
「もしも無人島にひとつだけ持っていくとしたら?」を真剣に考え過ぎた男の病室を訪ねた。
(第151回 規定部門・無人島)
「もしもこの男の病室にひとつだけ持っていくとしたら?」を真剣に考えてみたのですが、ビンタが最適かと思います。強烈なのを一発お見舞いしてやれば完治するんじゃないでしょうか。お大事にしなくてよし。
「嫌い」の花びらをアリが運んでゆく。
(第157回 規定部門・占い)
書き出し小説の描写においてリアリティというのはあまり気にしたことがないのですが、このときはなぜだか「アリが花びらを餌にする」ということは実際に有り得るのだろうかと無性に気になってしまい、“アリ 花びら 食べる”でググるなどして小一時間ほどアリの食性について調べた記憶があります。
結果よくわからなかったのですが、まぁ腹が減ったら何でも食うんじゃねえかな、と特に根拠のない結論に達した為そのまま投稿しました。
割とすんなり思いついたのに、なんだかんだ妙に時間のかかった作品として印象に残っています。
冬の金玉は揺れない。
(第207回 自由部門)
先日発表された最新回にて「とんでもない名言!」という天久さんのコメントと共に掲載されているのを発見し、投稿も採用も久しぶりだったものですっかりテンションが上がってしまいました。
すでにほぼ完成していた自選を急遽差し替えてしまうほどの極端なハイテンションの最中にあっても、やはり揺れませんでした。微動だにしません。冬なので。
書き出し小説というよりは「意味なし報告」といいますか、ただの事実を堂々と断言しただけであり、本当に意味がないのでこれ以上は特に語ることもありません。
揺れる季節になったらまた報告しようと思います。
以上です。
なんだかとてつもなく地味な回になってしまったのではないかと不安もありますが、自身の書き出しライフを振り返ることができてとても楽しかったです。
ありがとうございました!
次回の書き出し自選は、けーさんにお願いしたいと思います。
けーさんと自分はおそらく同じぐらいの時期に投稿を始めたのではないかと思うのですが、採用数ではダブルスコア以上の差をつけられている気がします。幅広い作風と抜群の安定感で良質な書き出しを量産されているけーさん、どんな自選になるのか楽しみです。
よろしくお願いします!