奇跡(紀野珍)

「お父さん! 見て! お母さんが!」
「ああ、奇跡だ。ミツコが目を開けてる……!」
「……あなた、マユミ……。どうしたの、ふたりともそんなに泣いちゃって……」
「お母さああああん!」
「ミツコ! よかったな! よかったな!」
「ほっほっほ。見てのとおり、おぬしらの願いは聞き入れたぞい」
「神様、ありがとうございます!」
「……かみ、さま……?」
「本当に、本当に……この感謝の気持ちをどうお伝えすればいいのか……」
「たいしたことではない。救いを求める我が子にささやかな恵みを施したまで。では、わしはそろそろおいとまするかの。これからも信心を忘れず、家族三人、清く正直に生きるのじゃぞ。さらばじゃ。ほーっほっほっほっほ——」


 そこで目が覚めた。


「——なんだ、夢か」
 神はつぶやいた。


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