殺人の確認(もんぜん)
わたしに殺されたことを知っていたので、このイタコは本物だと思った。間違いなく彼女はイタコに降りてきている。今のところ、取り乱す様子はない。
「どうやって、わたしを殺したの?」
彼女がそう聞いてきた。
わたしは彼女を殺すために綿密な準備を行ってきた。優秀なイタコを調べたのもその一つ。わたしの見た目がだいぶ変わったので、彼女がわたしを認識できない可能性もあったが、それも杞憂に終わった。
まずは、どうやって殺したかを丁寧に説明しよう。
毎週火曜日、夫の仕事場に彼女が訪ねてくることをわたしは知っていた。建前は仕事の進捗確認ということなんだろう。でもいつも二人で料理を食べて、お酒を飲み、セックスして帰る。
彼女はまるでわたしなんていないかのように振る舞った。
だからわたしは皿やグラスやコンドームに毒を塗った。あの日、彼女がいつもと同じように夫を扱うなら死にいたるように。自らの選択の結果だから自業自得だと思ってほしい。
「あの人はわたしを愛していたの」
少し言い訳じみた口調で彼女は言った。イタコは100歳と言われても信じてしまうような風貌のお婆さんである。イタコを通じて愛を主張することに何の意味があるのだろう。滑稽ですらある。
「あの人はどうなったの?」
知らないとわたしは答えた。彼女が一番知りたいことを教えない。それで復讐は完成する。
わたしは彼女に宣言した。
「あなたはわたしに負けたの」
彼女は悔しそうな表情になった。イタコのお婆さんの顔にシワが増えて、荒れた海みたいになっている。このタイミングでいなくなるのが一番いい。
わたしは彼女より先にイタコから抜けた。
殺されたのはお互い様。イタコを使った勝負はわたしの勝ち。
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