文学R

物語がそこにある。それだけで私は救われる。

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物語がそこにある。それだけで私は救われる。

最近の記事

優しい嘘は、自分にはつけない。

 明日までは生きていたいけど、来年までと言われたらしんどく感じてしまう。なんて言うか、別に生きたくもないし死にたくもないというような漠然とした思いが混在している、そんな感じ。そう、まさにクラゲのように漂っていたい。生きたいが死にたいの裏返しで、死にたいが生きたいの裏返しだとすれば、結局なにが私の本当の願いなのだろう?中学生の頃から、私はなぜかずっと死にたいと思っていた。死にたくて死にたくて、仕方がなくて。でも痛いのは嫌で。特に病んでいるわけでもないし、家庭にも友人にも恵まれて

    • 処女作:ペンギンも空を飛べるはず

       「ねえ、どうして私は空を飛べないの?」  広大な南極大陸のちっぽけな氷山の上で、コウテイペンギンの子はポツリと弱音を吐いた。一面の銀世界と吹きすさぶ極寒の風が支配する空間では、そんな些細な疑問ですらも厳かに包み込む。彼女は、今よりもずっと幼い頃に群れからハグれた一羽のペンギン。両親の顔も知らなければ、生まれた場所さえも分からない。ましてや自分の正体ですら不確かなものだった。彼女は今日も、凍えそうな氷の上で自由な大空を羽ばたくワタリドリを見上げていた。  「…それは、君がペ