松原通りを行く。
松原通りを堀川通りから歩いていくと、こんな珈琲屋さんがあった。
ISHIHARAさんというそうな。
佇まいにも惹かれたけど、ブレンドコーヒー330円にも驚いた。
屋根の下になにやらいわくありげな達磨さんがいて、見上げるこちらをいぶかしげに見下ろしていた。
ここ、行きに見つけて、帰りに寄ってみた。
扉を開けると、きっと定年前は真面目な勤め人だったんだろうなと思わせる、なんとも律儀そうな店主さんがおられた。
なんとなく気圧されて、写真を撮り損ねたのだが、L字カウンターとデーブル席が三つ。斜めに切られた黒い板がテーブル席とカウンターの間にあり、それは月見窓のように丸く切り抜かれていた。
ちゃんとあんじょう片付けられたおみせ。
お作法のようにきちんと湯を落として出来上がった珈琲は、じつに後味が良く、余韻が楽しめた。
330円では申し訳ないなとおもった。
他にお客さんがいなかったので、おもての達磨さんのいわれを聞いてみた。
店主さんの親御さんがこの地でかつて小間物屋をされていて、その屋号にちなんだ達磨だとか。店内にもうひとつ達磨さんと屋号の額があった。
守り神のようだと思った。
店内の棚には他にも小さな置物があった。骨董のようだった。きちんと並べられたカップの横に、当たり前のように置かれていた。
そして、昔、隣にあり、今は伏見に移転したというお寺の門の上にあった桃のかたちの屋根瓦や、近くの天神さんの解体された社務所のそれが棚の天辺に観葉植物とともに飾られていた。
もうこの世界にないものの名残りの品々が大切に残されている。時を遡る思いとともに。
ほうほうと関心していると、常連さんらしい女性が「借金返しにきた」と言って入ってきた。
するととたんに店主さんの表情が柔らかくなった。お客さんとの距離の近さを思った。
ずっとここにいる。ずっと付き合っていく。そんな暮らしのなかの330円。ごちそうさま。
そして、同じく行きに見つけて、帰りに行ったお蕎麦屋さんは、えらく奥行きのあるお店だった。
入り口が通りからだいぶ入ったところにあり、中に入っても、渋い置物やお酒、蕎麦打ち台のある通路が長かった。
はじめまして、では、ちょっと、ドキドキする。
カウンター側の一番入り口ちかくの席に座ったので、奥がどうなっているのかわからなかったが、食べ終わった人が何人も出てきたので、広いんだなと思った。
カウンターのなかでは若い女性と初老の男性が滑らかな動きで働いていた。時々タイマーが鳴るのは蕎麦の茹で上がりを知らせているようだ。
給仕の女性が「すみません、お蕎麦はありますが、ご飯ものが終わりまして」と言う。12時半くらいだったが、もうない、とは。繁盛してるんだな、と思った。
久しぶりに天ざるそばを食べた。ああ、新蕎麦や、と味わう。季節は巡る。天ぷらは塩でも、と勧められた。玉ねぎのかき揚げが珍しく、それも美味しかった。
目的地は山口忠兵衛商店だった。手芸用品の卸のお店。しかも10%off‼️
あたしは袋を作って販売しているので、材料費がカットできるのはありがたい。
やっぱり行くし、やっぱり買うし、やっぱり重いし。
だから、帰り道は、二軒も寄り道したのだった。