そんな日がありました。
冬の日、思い出すこと。反省すること。
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物事を最後までやり遂げること 、ちかごろのわたしは、そいつがなかなかむずかしい。
こっちをやるとあっちが気になる。 あっちにいくとこっちの遣りっぱなしがまた気になって 、こっちへ戻ろうとすると 、その途中にあるものに気を引かれてしまって そこでまた何かし始める。
あかんあかん、とこっちに戻ると また、あっちが気になって・・・ 家の中でこころが迷子になってしまう。 そんな自分にため息が出る。
それならいっそおつかいへ、と やりっぱなしで表に出てみると 罰が当たったようにえらく寒くて、一番近くてワンフロアーのスーパーで 牛丼作るべく牛肉、白滝、おひたし用のほうれん草も買って
用事をすませて身を縮めて帰宅。
その途中で自転車に乗った母娘とすれちがう。
幼稚園くらいの髪の長い目の大きな女の子が すれちがいさまにわたしを見つめる。 ずっと見つめる。
行き過ぎてからも振り返ってわたしを見る。
「ねえ、あのひと、ほっぺどうしたの?痛いの?」
そうたずねる声を背中で聞いた。
あのおかあさんはなんと答えたのだろう。 自転車が行ってしまって、その声は聞こえなかった。
あのね、おばさんのこのほっぺはねえ 、命と取替えっこしたからなくなっちゃったの。
このほっぺを神様にあげて 、かわりにこの命をもらったの。
なんていったらあの子はなんと言うだろう。 泣き出してしまうだろうか。
わたしはもうそのことでは泣かないけど そんなことを思いついてしまうと 、このところの自分のこの命の使い方というか 、日々のありようがなんだかお粗末で 、誰に対してかはわからないが、すごく申し訳なくなってくる。
手術直後、生きていることがあんなに新鮮だったのに 、年月がたってみると今生きていることが、日々の出来事のなかでくすんでしまっている。
今日しなくても明日があるし 、なんて、明日に寄りかかって一日を終えている。
ほっぺと引き換えにもらったまっさらな命は もっともっと勇気があったな。いろんなこと決断して
いろんなことあきらめもしたけど 、それなりに挑みもしたよな。
そしてもっと時を惜しんでいたな。
会うべきひとには会っておかなくっちゃと 、こころに決めていたな。
神様がこの命を取り返しに来る前に しておかなくっちゃならないことがあると思っていたな。
ありがたくも永らえた命。
わたしはいつからか普通に生きはじめたから 、こんなふうにいろんなことがやりっぱなし・・・。
いかんいかん。 これではいかんだろう。
冬の日の夕暮れは、にわかに反省タイムとなり 、台所でもそんな気分を引きずって米を洗った。
本日のほうれん草は根っこがくっきり赤く 、たくさんの砂を噛んでいた。 食すると、まことに力強く ほうれん草本来の甘みがあった。
それはどっこい生きてるって感じの味だった。
読んでくださってありがとうございます😊 また読んでいただければ、幸いです❣️