うめぞの茶房
大宮通りを散歩途中に行きたかったところがおやすみで、ではっと思いついたのが、こちら。
何度かその前を通り気になっていたのだけれど、そばのさらさ西陣のほうへ行ってしまってたから、初めまして、となる。
タイルがおにぎやかなさらさ西陣に比して、こちらうめぞの茶房さんは、なんとなく、侘び寂びだった。
急勾配の狭い踏み板。京都の町家の階段はどこもこんなふうだった。
一瞬、あらら、と思う。なんというか、利休の朝顔のように、余計なものを削ぎ落とした空間だ。
そんな空間を独り占めする。
おお、これは懐かしい机だ。質実剛健だ。椅子も味わい深い。
一冊の本もない本棚。アンティークな品が置かれている。ひとつひとつに歴史があるのだろうが、なんとなくちぐはぐる感じ。
そしてお花。
選んだのは無花果のお菓子。無花果好きには少々お上品過ぎる感はあるけれど、ほのかな無花果感を味わう。
視線の先にあるものはどれも自分の思い出のなかにあるものと同じだったり、似ていたりする。とりわけ、このポットにはグッとくるものがあった。
その思い出をたぐると、これは病床のひとのまくらもとにあったりした。吸飲みというものが、この急須に似ていた。
家族が臥して、それを案じながら静まり返る家の中。往診にくるお医者さん、看護婦さん、消毒液の匂い。
そこに臥していたのは誰だったろう。あたしだったかもしれない。
散歩途中、こころは遠い時間をさまよっていた。
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