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みどりさんの言葉
友人のみどりさんが長逗留先から帰ってきたおりのこと。
*****
とても元気そうな声だった。ちょっと安心する。
あちらではだんだんわけのわからなくなってきた
90歳の老婦人が隣人だったという。
「そういう年寄りにどう接すればいいのか、教えてあげる」
とみどりさんはもったいをつける。
「あのね、そのひとにむかって、ひたすら愛を叫べばいいのよ」
90歳の老婦人に必要なのは、まわりに人間に愛されているのだという確かな実感なのだそうだ。
「ひがみやすくなってるからね」
とみどりさんは言い添えた。
うーん、だけど、それはなにも90歳の老婦人に
限ったことではないような気もするね。
90歳の老婦人になら言える言葉を、人生の伴侶に言い続けられるのか、は大きな課題だね。
当たり前のかわりばえしない暮らしの日々で、ずっと一緒にいて、嫌なところをいっぱい知っている相手を前にして、同じことができるのか。なかなかの難題。
90歳の他人に愛を叫ぶ。ひがみやすさへの特効薬。
ひがんではいけません、ではなく、愛を叫ぶ。北風と太陽か。
そうか、90歳はそんな風に扱ってもらえるのか。老いにはそういう免罪符があるのかもしれないな。死が近いことは、雪景色みたいにいろんなものを隠してくれるのかもしれないな。
日本のかたがたよ、愛を叫ぶ❣️って、できる?
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