そんな日のアーカイブ 映画感想文 Deep Blue
生き物として、同じ地球に生きるものとして、海のものはすげえな、と思わされる映像群だった。
海に生きる、生き続けるということにありのままの姿がそこにあった。身のうちのDNAに組み込まれた本能のレベルでの狩猟やら防戦やら回避やら慈しみやら遺棄やら、そのすべてに無駄がないと納得させられる。
紺碧は実に豊かな生き物の世界で、マリアナ海溝のどん底で、漆黒の闇のなかで、地球の芯に近いようなところで、ものすごい水圧や熱湯や硫化水素のなかで生きているやつらもいるのだ。高度な適応能力に敬礼。
その深海に潜っていったひとは宇宙を飛んだひとよりも少ないのだという。それは驚きだった。青い鳥ならぬ青い海だな。
この映像から食物連鎖と言う言葉は連想できても、その逆は普通の人間には無理だなと思う。
たくさんの恵みと計り知れない謎をはらむ紺碧の海のなかには目を見張る興奮と衝撃がある。思いがけないフォルムの美しさがある。深海で発光する海月やプランクトンにはだれもが目を奪われることだろう。
深海をも潜る探査船のなかにはいるのだけれど、映像として人間はひとりも出てこない。それでもこの壮大な映像をフィルムに納めきるまでに動いたひとのすごさが滲んでいる。どうやってこれを撮ったのかと考えるとちょっと鳥肌だったりもする。
ベルリンフィルの音楽が実に骨太で分厚く、広大な海とがっぷり四つに組んでいる感じがする。これでもか、というくらいに叩きつけるような音が耳に響くと、画面ではシャチがシロナガスクジラの赤ちゃんを狩っていたりする。どきどきする。
暖かい海はプランクトンも多くそれに養われる生き物で満ちているが、冷たい海には生きるために必要なものが少ない。青い砂漠という言葉が印象的だ。
寒さと飢えに堪えながら獲物を探すしろくまの親子や寄り添ってマイナス40度で吹雪に耐えながら卵を抱くコウテイペンギンの群れがこころに残る。
見終わってふうとクジラの潮吹きのような吐息をついてしまったのだった。いいよ、これ、すごく。
読んでくださってありがとうございます😊 また読んでいただければ、幸いです❣️