現実逃避
昨日の現実逃避……
その細い路地を入っていく。買い物荷物を抱えているけど、それは重たい現実だけど、しばしその現実の隙間から逃げ出したいわけで。
一歩一歩、なにかを落として行く。昨日今日明日の隙間にすすむような気分になって、その先に辿り着く。
何を大袈裟な。そこは喫茶店だよ。のばら珈琲。
でも、大好きな空間なんだよ。暮らしの時間とはちがう時間が流れてる気がするんだよ。
喫茶店の水ってのをTwitterにあげてるひとがいて、そのひともここにきたことあって、店主さんとお話したって。イケメンっていうのかしらね、って。
アイス紅茶牛乳添えを注文して、そのお水をくくくくっと飲んで、大きなため息をつく。そして部屋の中を見回す。
ここの空気は心地よい。通り過ぎてしまったあれこれがふわっと帰ってくる。
いにしえものに囲まれて、自分には懐かしい本を見つけてニヤリとしたり、センスのよい雑誌読んで、また、ふーっとひといきついて店内にある茶碗を購入することにして、店主さんとおはなしする。
「あら、気付かなかった。わかってたら最初から話したのに」って、店主さんが笑う。
ふふ、そうでしたか。わからんかったですか。オーラ消してますから、なんてこっそり思う。
そして、古物のあきないのことをうかがってみて、適切なお答えをいただく。
「それもありよ」
と静かな声に背中押されて、軋む両開きのドアを開けて、ふむふむ、ありかあ、とまた一歩ずつ、現実に帰っていった。
30分の時間旅行、束の間の現実逃避。
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