河原町今出川あたり
出町輸入食品で特選ブレンド珈琲を購入する。前は断った試飲の珈琲を今日はありがたくいただく。ミルクを入れてもあたしにはなかなかにストロング。
支払いをしながら
「昔友人がここでバイトしていたそうで、向かいに美味しいあんみつ屋さんがあるって聞きました」
と言うと
「行列ができることもある人気店ですよ」
と、教えてくれた。
寒天がご自慢の「みつばち」というあんみつ屋さん。
なんか懐かしいような店構え。学校帰りの寄り道気分になる。コロナ禍でもあり行列はみえない。店内に入ると、やはり席間が広い。
さて、なにをいただくか、メニューを取る。
なんか色々組み合わせができそうだが、写真を指差して、これを、と注文する。
九月半ばとはいえ、いささか暑かったので、まずかき氷をいただく。黒蜜ときな粉。
真ん中にも黒蜜きな粉。ふふ、いい感じ。
そして、あんみつ。謳い文句に違わず、寒天が優しい。回しかけた黒蜜がすごく濃厚なんだけど、これかちょうどいい感じになる。あんこもよかったけど、白玉が好きなタイプ。いいね。
ここのとなりか「はら」という喫茶店なのだが、お休みだった。素敵なスィーツがあるとか。次のおたのしみだ。
河原町今出川の交差点付近には広大な謎のエリアがある。いくつかの洋館に植物がからみ、広い庭には大きな木々が鬱蒼と茂り、いわくありげな廃墟のような大きなお屋敷群が塀からのぞいている。
今回その付近を歩いて、そこはかつてお寺だったのだと知った。今は荒れるに任せている風情の廃寺だ。
調べてみるとお寺の名は「了徳寺」といった。もともとは伏見宮だったとか。土地の詐欺事件がからんたりとかして、今は誰も居ないらしいが、最近本願寺に寄贈された、と書いてあった。
いずれせつないものがたりを孕んでいることだろう、とは、思っていたが、その、誰からも打ち捨てられて、ただいたずらに時を刻む姿が、どうにも哀れに思えて、写真を撮るのがためらわれた。
その門の手前を右に入っていくと、北村美術館がある。
前に骨董教室で青柳恵介先生からここはいいですよ、と聞いた記憶があった。
モダンな階段を上る。見えているドアは自動で開く。細見美術館の展示室も自動ドアだったなあ。京都は古くて新しい。
やはりコロナ禍で入館者が少なく、係の方が美術館の説明を詳しくしてくださった。
吉野の林業を営むおうちの次男さんが京都帝国大学を出て、京都下鴨あたりに住まれたとか。
売りに出されたこの地を購入し数寄屋造りのお家を建てたが、終戦後進駐軍に接収され、のちに建て替えた、とか。
展示は「秋懐」と題してあった。
お茶会のお道具の展示。ビッグネームに出会う。利休筆や俵屋宗達の牛図の掛け軸。楽家の作品。荒川豊蔵の皿。いやはや弩級だ。大好きな鼠志野もあった。よかった。
10月には敷地600坪のお屋敷の公開もあるらしい。すごいな。
そこから行列のふたばの前を通り、桝本商店街へ向かう。ここは庶民の暮らしだ。なにかとお安い。価値高いアンティークではなく、馴染み深いビンテージという感じのする時の形見の空間。
悲しいくらい腰のまがったおじさんが枯れた声で呼び込みをしたあと、地面の上で、茶色くなったバナナを分けていた。
出口ちかくの洋品店をのぞくと、ものすごくお安いお洋服が、2枚買うともっと安くなると言われて、ついその口車に乗ってしまった。安い自慢をするしかないな。
京都にもどってもうすぐ2年が経つが、コロナ禍もあり、まだまだ足を運んだことのないエリアがたくさんある。京都に住んではいるけれど、ずっと旅人気分で、知らない街を歩いている。