500個
ネットでバッグで500個売れたバッグの作り方をyoutubeにあげているハンドメイド作家さんがいた。
500個という数に驚く。それは無地の帆布のショルダーで、それが500個かあ、と。
まあ、それが売れ筋というものなんだな、と感心する。
売れない袋物つくりのおばさんには、まことにうらやましいことなのだが、では、あたし、無地の布地で500個も同じものを作れるのか、と自問して、いやあ、と首を傾げる。
そりゃしんどかろうなあ、と思う。
還暦記念の個展をしたとき、ポシェットを100個つくって、広い会場に同じ高さで横並びにして展示した。
https://ameblo.jp/bunbukuro/entry-11974399112.html
その100個はひとつとして同じ柄はなく、それぞれに布地の由来や思い入れの物語を書き出して、その下に添えた。
それでも、100個という数にはへこたれそうになった。箸休めのように、他の袋作りに手をだしたりした。
むろん冒頭の作家さんも、ただそのショルダーのみを作ってるわけではないかと思うし、しかも熟練されているだろうからそのことに抵抗はないのだろう。
とはいえ、同じものを500個を仕上げることはなかなかにすごいわ。工場じゃないし、ひとりで500個と想像するだけで、へなへなになる。
布が好きで、いろんな柄が楽しいから、不器用をかえりみず、文袋になったようなものだから、無地でおなじものを、というリクエストが来たら、パタリととびらをとじてしまいそうな気がする。
いやいや、そういうリクエストに、よろこんでーと応え得るのがプロなのだ、とも思う。そういう腕前があってのプロなのだ、と。
しかもそのレシピを惜しげもなくアップすることもすごいことだな、と思う。やれるものならやってごらんなさい、ではなく、あなたもやってみてね、みたいな感じ。
いやはや、たくさん反省する。ポジションの違いを痛感する。
ひとはひと、あたしはあたし、ではあるのだが、自分がちょっと進もうとして、ちょっと背伸びする度に、世の中にはすげえひとがいるもんだ、と感心して、俯いてしまう。
不器用だからさ、まいるのよ。
まあ、不器用なあたしが「好き」という気持ちだけでつづけてるのが文袋なのよ。そしてめげながら、あーであろうかこーであろうか、と手探りで進んできたわけで、まあ、この語もこのペースで進むんだろうな。いやもっとペースダウンするかもね。
ひとつの袋をひとりのひとが喜んでくださる。基本はそこだな。そのひとがそのひとの目で、そのひとの感覚で選んでくださることが、作り手の幸せなのだと思う。
ぴたっとお好みに合う、そんな出会いに何度か立ち会ったことがあり、それはなんとも幸せな瞬間にはだった。
500個売れることは魅力的なことだが、同じもののないただひとつの袋を選んでもらうことも、なかなか素敵なことだと思う。
てなわけで100個つくったポシェットの仲間は未だに手元にあったりする。道は遠いね。