そんな日のアーカイブ 映画感想文 ドライビング ミス ディジー
老いてホームに暮らすジェシカ・ダンディをその息子といっしょに彼女の運転手していたモーガン・フリーマンが訪ねる。
いっしょにたくさんの時間を過ごしてきた彼が感謝祭のパイをスプーンですくって彼女に食べさせる。
そんなふうに「ドライビング・ミス・ディジー」は終った。
ジェシカはモーガンを頼りきり、満足げな顔をしていた。そのスプーンのひとすくいひとすくいがどんな言葉よりもたくさんのことを物語る。
もうとうに教師など辞めているのに、生徒に返す答案用紙がない!とジェシカがうろたえていた。
痴呆が始まったのか、記憶が混乱したジェシカはモーガンになだめられる。こんなふうじゃ病院に送られてしまいますよ、と諭すモーガン。ジェシカは混乱しながらも彼の手を握って「お前はわたしの一番の友達だわ」と言う。
それは胸が熱くなるシーンだった。
そこにいたるまでまでのふたりの長いみちのり。
黒人と裕福なユダヤ老婦人の友情はたくさんの山坂があり、お互いがなかなかに噛みごたえがある存在だった。
さても、そんなふうな老いの問題。
家政婦が突然死したときジェシカは「彼女は幸せよ」という。モーガンもそう思うと答える。
そうだ、そんな台詞を何度も聞いた。
舅は脳梗塞で逝った。
「うまいこと死なはった。嫁さん孝行やてみんないわはる」
姑が繰り返しそう言った。
どんなふうに死ぬのか。そんな難題が老いの先に待ち受けている。
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