そんな日の東京アーカイブ 銀座2007年の写真展
一枚の写真に泣かされた。 ぽろぽろと流れた涙を
うまく誤魔化せなくて・・・こまった。
写真は駅の構内を写す。 列車は今しも出発しようとしている。旅立つひとびとは窓から身を乗り出して手を振っている。見送るひとびともまた手を振る。
右手前でもスカーフを頭にまいた中年の女性が
ふわりと手を上げている。その女性の表情がわたしを泣かせる。
送り出す身の寂しさもあるが、大切なひとの未来を案じる顔なのだ。自分を重ねて見ているのだと気づく。
パネルになって展示されたその写真には 「ブダペスト、ハンガリー、1964」とある。カメラマンの名はエリオット・アーウィット。マグナム・フォトスの中心メンバーだと紹介されている。
柳沢保正氏お奨めの写真展。 銀座シャネルのビルの4階。
著名人がおのおのエリオットの作品のベストを
選んだパンフレットがある。これは無料配布。そう入場も無料。シャネルは太っ腹!!
パンフのなかでクリエイティブディレクターの
岡康道というひとが、その写真をベストに選び
こう書いている。
「ドラマというものはおそらく物事の始まりと終わりにしか存在しないのだろう。別れとはある種の終わりである。この写真は、僕の気持ちの奥のほうに揺さぶりをかける」
そう、揺さぶられてしまう一枚だった。
こんな写真もある。洗濯ひもに一対のゴム手袋が洗濯ばさみで止めてある。
よりそうように仲むつまじく干されたゴム手袋。
その写真がなんともあったかい。
たくさんの写真の前で、吹き出したり、にやりとしたり、わくわくしたり ほほーと感心したり、いいなあと憧れたり 、まあ、と案じてみたりする。 どの写真にも物語が横たわっていて、自分もこんな写真が撮りたい!と思う写真ばかり。
見ているものは同じでも、シャッターを押すひとが違う。どこを切り取るのか、その力量だ、センスだ。
そして、写真は被写体といっしょに、カメラマンの気分やお人柄も写しこむ。いや、まるごとの生きざまもだ。
いろんなもののギアを入れ替えようと思ったりした写真展だった。