ほっこりくつろぐ「茶の間」の秘密
掘り炬燵 皆で車座 楽しい時間 (3)
「茶の間」という言葉、最近はすっかり聞かなくなってしまいましたね。
どちらかというと、リビングとか、ダイニングとか。
書生として「茶の間」を体験した私としては、断然おすすめ!
なぜだかのんびりできて、ほっこりくつるげる空間。くつろげるからこそ、時間も忘れておしゃべりもはずむ。忙しい毎日だからこそ大切にしたい時間が生まれる。それがこそ「茶の間」!
「鈴木信太郎記念館」の茶の間をヒントに、その空間の秘密を探ります。
実は、掘り炬燵のある茶の間の広さは、7畳。
決して広くないのに、ほっこりできるし、異次元的に時間がゆったり流れている。なぜでしょう?
この「広くない」というのが大切。広けりゃよい、というものでもありません。
なんとなく落ち着く場所づくりには、ほどほどの広さと工夫が重要。
そして、その秘密は、やはり「掘り炬燵」にあります。
「掘り炬燵」は、床が切り下げられているので、足を落として座ることができて、椅子に腰掛けた姿勢いられるので、長く座っているのに疲れないんです。それに、みんなで囲むテーブル(櫓)の大きさは、畳に合わせてあって、人同士の距離感が近すぎず、遠すぎず、ちょうどいい感じです。
それなら、テーブルだっていいんじゃない?って思いませんか。
掘り炬燵は、椅子もなく胡座もかかないので、意外と数人が詰めあって入れます。こんなふうに炬燵を囲んだときのアットホーム感が、なんともおもしろい!
そんな「人数制限なし!」的な柔らかさも、日本の住まいのよいところですね。
そして、椅子に座っているのと大きく異なるのは、畳床面に座っていると、天井が高く感じられるんです。「床座」は空間を広くは感じることができる、という訳。
大人が数人、肩寄せ合うほどで車座になれるのに、意外と窮屈さを感じさせない。それどころか、妙にゆったり落ち着くし、おしゃべりもはずむ。
これこそ「茶の間」そのものの魅力です。
さらに、大切なことがもう一つ。
炬燵は、エアコンのように空気を温める暖房とは異なり、そのものの暖かさを肌で感じる「輻射熱(ふくしゃねつ)暖房」というもの。この方が、実は暖かさを感じやすく、熱源も少なくてすむんです。一粒で二度美味しい!という暖房です。
囲炉裏もまさにそうで、日本はかつて、こうした方式が主流でした。
家族みなで、一つのテーブルに足をつっこんで、小さな熱源で温まってほっこり、なんていうのも、資源が少なく、小さな住まいが一般的だった日本らしい、素敵なところなのかもしれませんね。まさに、シェアを楽しむエコスタイル!
信太郎記念館の掘り炬燵の下にも、当時、そうした形跡、雰囲気が残っています。
もう一つ、この茶の間のすごいところは、「かゆいところに手が届く」ところ。笑
3代目書生OMAさんの投稿にもありましたが、いったん座ると、立たなくても、ポットと急須、湯呑みなどのお茶セット、お菓子が隠されている?!戸棚があり、どれもだいたい手が届く距離にあります。窓もあって、庭の花々も眺められるし、来客や郵便屋さんの来訪もわかる。なので、郵便屋さんから手渡しされることも。とにかく「ここでやることに必要なものは、座っていて手が届く!」それなのに、炬燵のようなだらだらした嫌なずぼら感がない、という絶妙さ。
これが、この「茶の間」のなんともいえない魅力なのです。